脳のスキャンで「考えていること」が分かる?

脳のスキャンで「考えていること」が分かる、英研究

以下は、記事の抜粋です。


脳の活動をスキャンすることで、その人が考えていることを知ることができるという研究結果が、3月11日の米科学誌Current Biology(電子版)に掲載された。

University College London (UCL)のEleanor Maguireらは、「機能的磁気共鳴画像装置」(fMRI)を用いて、ひとつひとつの記憶と関連した脳活動を特定することができ、さらに、それをもとに思考のパターンを特定できることをつきとめた。この研究結果は、人が過去の記憶のうち、どの記憶を呼び起こしているかを、脳活動のパターンだけで特定することができることを示唆している。

「脳の海馬において、ぞれぞれの記憶が異なった形で表されていることをつきとめた。記憶のありかをつきとめたので、今後は、記憶が保管される方法や、記憶の時間経過による変化について調べることができるだろう」(Maguire氏)

研究は、被験者10人に対し、3本の短編映画(7秒のクリップ)を見せたあとで脳をスキャンした。3本の映画はよく似たごくふつうの生活の場面を撮影したもので、別々の女優が演じていた。

映画を見た後、被験者はそれぞれの映画を思い出すよう促され、その際に脳のスキャンが行われた。研究者らは、スキャン結果にコンピューターで画像化処理を行い、それぞれの映画の記憶に対応する脳活動のパターンを識別した。

その結果、脳の画像パターンから被験者が3本の映画のうちのどの映画を想起しているか、正確に特定できたという。

報告書は、脳に残されたエピソード記憶の痕跡は、その領域が何度も再活性化された後にも特定可能であることを示唆していると結論づけた。


元論文のタイトルは、”Decoding Individual Episodic Memory Traces in the Human Hippocampus.”です(要約をみる)。

fMRIは、脳の局所的な活動に伴う血管内の血液の磁性の変化を利用して、血流量の変化を計測します(詳しい原理は、ここ)。

脳内の局所的な活動によって局所血流量が大幅に増加すると、反磁性をもつ酸化ヘモグロビンを含んだ血液が多量に流入します。その結果、常磁性をもつ脱酸化ヘモグロビンに対して酸化ヘモグロビンが相対的に増加し、MR信号の増大となって現れます。これをBOLD(Blood Oxygen Level Dependent)効果と呼んでいます。

本研究では、このBOLDシグナルによるMR信号の変化を解析し、海馬を中心としたヒト脳各部位の活動を調べました。

今回の報告では、海馬のBOLDシグナルを解析すれば、被験者にみせた3つの異なるクリップのどれを思い出しているかを、かなり正確に予測できることが示されました。

「『考えていること』がわかる」というのは、ウソではないですが、誤解をまねく表現です。「3つのエピソードの中のどのエピソードを考えているか」がわかる程度です。

fMRI装置です。非常にうるさくて、なかなか考えに集中できない人もいるそうです。

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