係争中の論文海賊サイト「Sci-Hub」について

係争中の論文海賊サイト「Sci-Hub」に科学者らが「違法になると科学が壊滅的被害、金を払える欧米の大学を利するのみ」と主張
インドでの話ですが、興味深い記事です。以下は、抜粋です。


通常であればアクセスに多額の費用がかかってしまう研究論文を無料で読めるようにしている海賊版サイトが「Sci-Hub」です。Sci-Hubは資金繰りに困窮する研究者にとっては有益である反面、出版社からは利益を害するものと見なされ、学術雑誌出版社大手のエルゼビアなどから訴訟を起こされています。

2020年12月、エルゼビア、アメリカ化学会、Wiley India、Wiley Periodicalsの4つの出版社が、Sci-Hubを相手取ってインドで訴訟を起こしました。出版社側は「Sci-Hubが著作権を侵害し、フィッシング攻撃により盗んだユーザーの資格情報を使用して論文にアクセスしている」と主張し、国内からSci-Hubへのアクセスを恒久的にブロックするよう裁判所に求めました。

しかし、この訴訟に関してインド国内の科学者らが「Sci-Hubへのアクセスがブロックされると、国内の教育と科学の発展に壊滅的な結果をもたらす可能性がある」と警鐘を鳴らしています。

インド国際理論科学研究センターに所属する理論物理学者のSuvrat Raju氏は、「論文へのアクセスに多額の費用がかかるシステムにより裕福な大学が間接的に恩恵を受けている」と主張。「裕福な大学は論文の購読費を簡単に支払うことができるので、購読費をまかなえない他の国の研究者に対して競争上優位に立っている」と述べています。

1934年に設立されたインドのインド科学アカデミーで館長を務めたRam Ramaswamy氏は
「機関によって資金繰りが大きく異なるため、私を含め、多くの人にとってSci-Hubは便利なものでした」と述べ、他の科学者らとともに法的なプロセスにのっとって裁判所に資料を提出し、Sci-Hub側の手助けをしていると話しました。

Sci-Hubの創設者は「科学は少数の大企業によって管理されるべきではなく、学会と直接結び付くネットワークであるべきだ」と述べ、訴訟には動じない姿勢を見せています。ただ、同様の目的を持って開設された海賊版とは異なる無料の論文掲載サイト「arXiv」の創設者であるポール・ギンスパーグ氏は「ゲームが気に入らない場合は、ルールを破るよりもルールを変更することをお勧めする」と述べ、Sci-Hubのモデルは持続可能ではないと警告しました。デリーの国立法大学のアルル・ジョージ・スカリア氏は「例えSci-HubがブロックされてもSci-Hubの必要性を生み出した根本的な構造は変わらないため、その問題が解決されない限りいくらでも同様のサイトが登場する」と述べました。


私の意見もRajuやRamaswamyと同じです、石川五右衛門が言ったとされる「石川や 浜の真砂は尽きるとも世に盗人の種は尽きまじ」を思い出しました。

別の記事で、Sci-Hubへどの国の利用が多いかを知ることができます(記事をみる)。2022年2月におけるSci-Hubでの論文のダウンロード数上位20か国が以下。ただし、示されているデータはSci-Hubの本サイトからのダウンロードのみで、ミラーサイトやコピーサイトからのダウンロード数は含みません。1位は中国で2800万件超、2位のアメリカは1300万件超で、日本は45万9993件でした。

下の図をみると、日本の大学が裕福なだけでダウンロード数が少ないとは考えにくいです。何となくですが、日本の研究力の低下が予感される結果のような気がします。

コメント

タイトルとURLをコピーしました