嚢胞性繊維症(cystic fibrosis)のマウスに抗糖尿病薬(ロシグリタゾン)が効果

Pharmacological correction of a defect in PPAR-γ signaling ameliorates disease severity in Cftr-deficient mice

以下は、要約の抜粋です。


嚢胞性繊維症(cystic fibrosis、CF)は、気道上皮細胞などの管腔側面に存在するcystic fibrosis transmembrane conductance regulator (CFTR)をコードする遺伝子の変異でおこり、重炭酸の輸送を助けるクロライドチャネルとしての働きが損なわれることにより発症する。CF患者は、気道を塞ぐ粘調な粘液の貯留、その他の管腔臓器の閉塞を示すと共に、障害臓器の炎症、脂質代謝異状、インスリン抵抗性など数多くの症状を示す。

本研究では、CFTR欠損マウスから単離した腸上皮細胞と全肺組織が、peroxisome proliferator–activated receptor-γ (PPAR-γ) 機能異常の結果、病的な遺伝子発現を示すことを明らかにした。

腸管上皮細胞の全脂肪(リピドーム)解析の結果、これらの異常の一部は、PPAR-γリガンドである15-keto-prostaglandin E2 (15-keto-PGE2)の減少によっておこることが示唆された。

CFTR欠損マウスを合成PPAR-γリガンド、ロシグリタゾン、によって治療したところ、遺伝子欠損によってひき起こされた病的遺伝子発現を一部正常化し、症状や死亡率を改善した。

ロシグリタゾンは、腸管でのクロライドイオン分泌には影響しないが、炭酸脱水酵素をコードするCar4とCar2という遺伝子の発現を増やして粘液の貯留を減らす。

これらの結果により、CFTR欠損細胞におけるPPAR-γシグナル異常は可逆的であり、モデルマウスのCF表現型は、薬物によって重傷度を軽減できることが明らかになった。


ミラクル・ツインズ(The power of two)で紹介したcyctic fibrosis (CF、嚢胞性線維症)は、白人では2500人に1人発症する遺伝病です。

昨年10月のイサベルさんとアナベルさんの講演では、気道に詰まった粘液を排出するために、肺移植をする前は、毎日お互いの背中をたたきあったという話をききました。その時、本当に双子で良かったと感じたと話したことが印象的でした。

CF患者では、気道だけではなく、小腸、大腸、膵管などに非常に粘調な粘液が溜まります。これが、腸閉塞、膵不全・糖尿病、肝硬変、慢性肺感染症の原因となります。

論文の結果は、これらの症状がPPAR-γリガンドである15-keto-PGE2の減少によっておこる可能性と、既存の抗糖尿病薬であるロシグリタゾンやピオグリタゾン(アクトス)がこれらの症状に有効である可能性を示しています。

論文では、粘液貯留と同時に炎症反応遺伝子の過剰発現もPPPAR-γ依存的にロシグリタゾンによって抑制されるようです。

彼女らは、毎日薬を約30錠飲むといっていましたが、その中には抗糖尿病薬も含まれていました。免疫抑制薬として服用する副腎皮質ステロイドによって糖尿病になったと思われますが、ロシグリタゾンやピオグリタゾンを服用していたかどうかはわかりません。

いずれにしても、既存の薬物がCFに有効である可能性が発見されたことは、とても素晴らしいと思います。

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ところで、一昨日参加した勉強会で聞いたのですが、DPP-4阻害薬もSU薬と併用した場合には低血糖ショックをおこすことがあるそうです。また、高齢者の場合、糖尿病における厳格な血糖コントロールは、低血糖とそれに伴う認知症をおこしやすいので、避けた方が良いかもしれないそうです。

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