以下は、記事の抜粋です。
パーキンソン病に関係する神経細胞の「受容体」というたんぱく質の構造解析に、京都大学などが成功した。この受容体に結合する物質が見つかれば、新薬開発が可能になる成果だ。ネイチャー誌電子版に1月30日、発表した。
パーキンソン病は、脳内の神経細胞の異常で発症する難病で、手足の震えなどの動作障害を引き起こす。神経細胞表面にある特定の受容体に、神経伝達物質などが異常な形で結合すると、神経細胞の働きが狂ってパーキンソン病が起きるとみられる。この受容体の構造が分かれば、神経細胞の異常を抑える薬の開発につながるが、受容体を人工的に作ることは難しかった。
研究者らはまず、酵母の遺伝子を操作するなどして、受容体と結合できる「抗体」を大量に作製した。この抗体が受容体の部品となるたんぱく質に結合すると、これらのたんぱく質同士がくっつきあい、受容体全体の結晶ができあがった。
元論文のタイトルは、”G-protein-coupled receptor inactivation by an allosteric inverse-agonist antibody”です(論文をみる)。この論文は、これまで不完全な構造しか明らかではなかったアデノシンという神経伝達物質のA2A受容体の構造を、結合抗体および薬物との共結晶化によって明らかにしたという報告です。
カフェインがこのA2A受容体に結合してアデノシンの神経伝達を阻害することは良く知られています。論文にもコーヒーを良く飲むヒトはパーキンソン病になるリスクが低いという疫学研究が紹介されています。さらに最近では、PreladenantというA2A受容体拮抗薬のパーキンソン病に対する臨床試験の結果がLancetに発表され、一定の効果をあげたことが報告されています(論文をみる)。
また、D2ドーパミン受容体とA2A受容体を共発現する神経細胞では、これら2つの受容体の間に相互作用があることも報告されています。しかし、私が調べた限りでは、「神経細胞表面にある特定の受容体に、神経伝達物質などが異常な形で結合すると、神経細胞の働きが狂ってパーキンソン病が起きるとみられる。」という記事の文章を裏付ける論文あるいは報告をみつけることはできませんでした。
A2A受容体の構造解析の成功は素晴らしい研究成果ですが、「パーキンソン病新薬に光」という記事のタイトルはやりすぎだと思います。
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