身体活動は膝の痛みのリスク因子でない
私もスポーツは膝痛のリスクファクターだと思っていました。以下は、抜粋です。
熱心にランニングを続けているデューク大学のKim Huffman氏は、よく人から「そんなに走っていたらそのうち膝を痛める」と忠告される。しかし彼女は「その忠告には根拠がない」と言う。彼女のこの考え方を支持する、サウサンプトン大学のLucy S. Gates氏らの研究結果が発表された。運動量と膝関節のトラブルとの間に関連は認められなかったという。
研究では、米国、英国、オーストラリアなどで行われた6件のコホート研究のデータを統合。レクリエーションスポーツやウォーキング、サイクリングなどの身体活動と、変形性膝関節症(膝OA)との関連を検討した。研究参加者計5,065人を5~12年間追跡した検討の結果、身体活動による運動強度と運動時間のいずれも、膝OAの発症やOA関連の膝の痛み、画像所見との間に有意な関連が認められなかった。
では、世間一般のこのような誤解はどこから来たのだろうか?Huffman氏は、「現在明らかになっている膝OAのリスク因子は、遺伝とけが、そして性別が女性であることなどだ。運動量が多い人はけがの頻度が高いために、膝のトラブルも増える。それが誤解の始まりだろう」と同氏は語る。
Huffman氏によると、運動はむしろ膝を保護するように作用するという。具体的には以下のような作用メカニズムが考えられるとのことだ。
・膝の曲げ伸ばしに伴い膝関節まわりの循環が良くなり、栄養が行き渡る。
・運動によって代謝が改善し、膝関節の炎症が抑制される。
・運動により体重が減ると膝の負担が減る。
・運動で膝まわりの筋肉が強化されて膝が安定し、けがのリスクが減る。
「膝関節の使い過ぎが膝の痛みの原因ではないと言って良い。膝の痛みはけがとの関連で生じるのであって、痛みを生じるリスクはおそらく肥満や遺伝的背景が関連しているのではないか」とHuffman氏は解説。その上で、膝の痛みを防ぐ最適な方法として、膝のけがのリスクが少ない運動を行うことを推奨している。
一方、米シダーズ・シナイ・ケルラン・ジョーブ研究所のBert R. Mandelbaum氏は、「身体活動は、身体的・精神的健康の維持に不可欠であり、生活の質(QOL)の向上に中心的な役割を果たす。さらに、不安感の抑制、気分の改善、糖尿病・肥満・高血圧・冠状動脈疾患のリスク低下などをもたらし、それらの結果、長寿にもつながる」とも語っている。
元論文のタイトルは、”Recreational Physical Activity and Risk of Incident Knee Osteoarthritis: an international meta-analysis of individual participant-level data(レクリエーションでの身体活動と変形性膝関節症の発症リスク:参加者個人レベルのデータによる国際的なメタ分析)”です(論文をみる)。
記事に書かれていたレクリエーションスポーツというのを知らなかったので調べてみました。Wikiによると、ニュースポーツ(new sports)ともよばれる、20世紀後半以降に新しく考案・紹介されたスポーツ群をいうそうです。その数は数十種類におよぶ。軽スポーツ、やわらかいスポーツ、とも呼ばれます(Wikiをみる)。知らないスポーツが多いですが、ゲートボールやダーツが含まれるようです。これらとサイクリングやウォーキングは大丈夫ということは理解できます。Huffman氏が熱心に行っているランニングが検証されたかどうかは不明です。
この記事を読んでも、「スポーツは膝痛のリスクファクター」という私の考えはあまり変わりませんでした。どう考えても、相撲などの多くのスポーツは膝に悪いと思います。
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