以下は、記事の抜粋です。
原因不明の激しい疲労や倦怠感が半年以上続く慢性疲労症候群(CFS)について、浜松ホトニクス、浜松医大、理化学研究所、関西福祉科学大などの研究グループは、認知機能にかかわる神経伝達物質受容体を攻撃する「自己抗体」が患者の血中で生成されて脳内に入り込み、機能を低下させるメカニズムを解明し、12月12日のプロスワン誌に論文で発表した。
CFSは、感染症や過度のストレスなど複合的な要因から、免疫系などに異常が生じ、脳神経系が機能障害に陥ると考えられているが、詳しい発症メカニズムは分かっていない。同グループは、CFS患者の約半数で、神経伝達物質受容体(mAchR)に反応して攻撃する自己抗体が血中に検出されている例があることに着目。自己抗体を持つ患者5人と持たない患者6人、健常者11人の脳をPET検査で比較したところ、自己抗体を持つ患者の脳では、mAchRの発現量が10~25%低下していた。
人間の脳は、一般に脳血管から脳神経細胞に有害物質が入り込まない仕組みになっている。同グループは今回の研究で、CFS患者の血中では、免疫系の異常により自己抗体が作られて脳内に入り込み、神経伝達機能に直接影響を及ぼすという可能性が示唆されたとしている。
元論文のタイトルは、”Reduction of [11C](+)3-MPB Binding in Brain of Chronic Fatigue Syndrome with Serum Autoantibody against Muscarinic Cholinergic Receptor”です(論文をみる)。
下の論文の図で、NCは健常者、CFS(+)は抗体を持つ患者、CFS(-)は抗体を持たない患者です。血中抗体はM1受容体と反応する抗体、PETはほぼ全てのムスカリン受容体サブタイプに高親和性に結合するリガンドで測定しています。
問題は、ムスカリン受容体の数とCFSの症状に相関がないこと、ムスカリン受容体特にM1受容体が減少しているのに認知障害などの症状が出ていないこと、症例数が少ないこと、などなどがあげられます。論文でも、シェーグレンや統合失調症でも血中にムスカリン受容体抗体が出現する例があることから、本論文で報告したムスカリン受容体抗体の出現はCFSにおいて一般化できないとコメントしています。
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