セマグルチド(GLP-1薬)はアルツハイマー病と関連する生理指標一揃いを改善したが、その作用はアルツハイマー病の進展を遅らせる効果には繋がらなかった

注目の試験でGLP-1薬のアルツハイマー病治療効果示せず
以下は、記事の抜粋です。


GLP-1受容体作動薬(GLP-1薬)は肥満、糖尿病、それらと密接に関わる心血管疾患や腎疾患の治療を進歩させました。とくに、アルツハイマー病などの神経変性疾患の治療はGLP-1薬の新たな用途として有望視されていましたが、Novo Nordisk社が先週月曜日に速報した2つの第III相試験結果はその期待に沿うものではありませんでした。

セマグルチドなどのGLP-1薬が神経変性疾患を予防しうることは示唆されていたものの、すでにそうなってしまってからでは手遅れと多くの研究者は感じていたようです。

アルツハイマー病にGLP-1が有益そうな報告が増えていることにも背中を押され、さかのぼること5年前の2020年12月にNovo Nordisk社はその責任を果たすための第III相試験の決定を発表します。翌春2021年5月にevoke試験とevoke+試験が始まり、初期段階のアルツハイマー病患者のべ4千例弱(3,808例)が組み入れられ、2試験とも被験者は最大14 mg/日のセマグルチドを連日服用する群かプラセボ群に1対1の比で割り振られました。

2試験とも約2年間(104週間)の主要な治療期間とその後の約1年間(52週間)の延長期間の経過を調べる算段となっていました。しかし、今回速報された2年間の経過の解析結果で両試験ともアルツハイマー病進展の有意な抑制効果が示せず、1年間の延長は中止となりました。

発表によると、セマグルチドはアルツハイマー病と関連する生理指標一揃いを改善しましたが、その作用はどちらの試験でもアルツハイマー病の進展を遅らせる効果には繋がりませんでした

具体的には、知能や身のこなしを検査する臨床認知症評価尺度(CDR-SB)の104週時点の点数のベースラインとの差の比較で、セマグルチドがプラセボより優越なことが示せませんでした。

目当ての効果は認められなかったとはいえ、evoke/evoke+試験からは貴重な情報の数々が得られそうです。たとえばその1つは脳での抗炎症作用です。先立つ試験で示唆されているような体重減少とは独立した手広い抗炎症作用がセマグルチドにあるかどうかが、糖尿病や肥満ではない多数の被験者が参加したそれら2つの大規模試験で明らかになりそうです。

それに、試験には脆弱な患者が多く参加しており、脂肪に加えて筋肉も減らすセマグルチドなどのGLP-1薬がそういう患者に安全かどうかも知ることができそうです。


残念な結果ですが、ネガティブデータは非常に重要です。

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