メディア・会社員に「国保逃れ」を批判する資格はあるか?維新の会を糾弾しても解決しない健康保険制度の構造的欠陥
おもしろい視点です。以下は、記事の抜粋です。
立憲民主党と公明党が合流を発表した日に、日本維新の会がいわゆる「国保逃れ」をした議員6名を除名するとの発表をしました。「国保逃れ」とはどういうことかというと、本来、国民健康保険に加入するのが当然の議員が、一般社団法人の理事になることにより、最大で年間100万円近くも健康保険料を低くできるというものです。
議員の歳費は1000万円を超えるケースもあり、その場合、国民健康保険の保険料の上限である年額109万円を負担しなければなりません。ところが、一般社団法人の理事として低い報酬を設定すれば、年額8万円程度にまで抑えることができます。
このスキームそのものは合法ですが、実態のない法人を立ち上げ、「国保逃れ」のために理事に就任し、健康保険料を抑制するという手法は極めて脱法的で、本来公益に貢献することが求められる議員としての資質を問われることは致し方ないことでしょう。
ただ、私には国保逃れを責める資格がないと思っています。なぜならば、私は「健康保険組合」に加入しているからです。健康保険組合に加入しているとなぜ「国保逃れ」を批判する資格がないのか、少し説明してみようと思います。
「国保逃れ」の背景に国民健康保険料の異常な高さ
まず、前提として公的健康保険には以下のものがあります。
(1) 一定規模の企業や同業種が組成して独自に運営する健康保険組合(組合健保)
(2) (1)の組合健保がない企業の被使用者が加入する全国健康保険協会(協会けんぽ)
(3) 公務員が加入する共済組合
(4) 75歳以上が加入する後期高齢者医療制度
(5) 職業ごとに組織される国保組合
(6) 都道府県と市町村が運営する国民健康保険
(4)はちょっと特殊なので除外するとして、(6)がいわゆる「国保」なのですが、この保険料が強烈に高いのです。
手元で試算してみたところ、仮に私が今の年収のまま国保になったら年間50万円も健康保険料が増えるようで、さすがにツラい金額です。ではなぜ国保はこんなに高いのでしょうか?
国保が高いのは「労使折半がないから」ではない
ネットで検索すると「国保には労使折半がないから高い」というような情報がたくさんヒットします。これは端的にいって誤りです。
これは、2022年に厚生労働省が作成した資料を見ると、国保の公費負担が「給付費等の50%+保険料軽減等」、協会けんぽが「給付費等の16.4%」、組合健保は額として「725億円」とかなり少なく、共済組合は「なし」です。
つまり、国保は労使折半はありませんが、そもそも公費が50%負担しているわけですから、いわば、国が折半してくれているわけです。協会けんぽは16.4%を公費負担した上で労使折半ですからちょっと有利かもしれませんが、組合健保と共済組合はほぼ公費負担なしですので、国保と条件は同じです。
また、加入者1人あたりの平均保険料は国保、協会けんぽ、組合健保、共済組合がそれぞれ、8.9万円、11.9万円、13.2万円、14.4万円ですので、一見国保が安く見えますが、この原因は所得の低い方が多く国保に加入しているからです。「保険料負担率(平均保険料/平均所得)」をみると、それぞれ、10.3%、7.5%、5.8%、5.8%と、同じ所得で比べるとやはり国保が高いということがわかります。

ではなぜ国保が高いのかというと、それは、国保に医療リスクの高い加入者が集中しているからです。「加入者一人あたり医療費」をみると、国保が37.9万円なのに対し、協会けんぽ、健保組合、共済組合がそれぞれ18.6万円、16.4万円、16.3万円と、約半分です。
要は、国保には健康を害しており会社勤めのできない方や、会社を定年退職して国保に移ってきた60~74歳(75歳以降は後期高齢者医療制度に移行)までの方がいるため、医療費が倍になっているということです。
これは、逆からいえば、協会けんぽや健保組合、共済組合は「健康な人を囲い込んでいる」ということになります。
私が健康保険組合に加入していると「国保逃れ」を批判する資格がないというのは、自身は健康な人を囲い込むことで安い保険料を実現した健康保険を利用し、リスクの高い加入者を国保に押し付けて国保加入者に高い保険料を負担させているにもかかわらず、そこから脱法的とはいえ合法な手段で離脱しようとする人を批判するのはさすがに酷なのではないかと思うからです。
メディアや有識者に「国保逃れ」を批判する資格はあるか?
朝日新聞は社説で厳しく「国保逃れ」を批判しています(朝日新聞を選んだことに他意は無く、たまたま見かけたからです)。また、国保逃れを報じる記事に、大学教授や弁護士が批判コメントを寄せています。
しかし、朝日新聞の社説を書いた人も、「朝日新聞健康保険組合」に加入して、リスクの高い加入者を国保に押し付けたことで実現した安い健康保険料を享受しているのではないでしょうか?批判コメントをしている大学教授や弁護士も、大学や弁護士の健康保険組合に加入しているはずです。
もちろん、社説や批判コメントの内容自体は決して誤りではないと思います。しかし、自身は保険料の安い健康保険組合を利用しておきながら、国保から逃げようとする人を批判することには違和感を覚えざるを得ません。
せめて、「国保逃れ」の批判とあわせて、制度が半ば意図的に起こしたリスクの偏りにより生じた、国保加入者とそれ以外の健康保険加入者の間の、容認しがたいレベルの負担の差の解消を訴えていく必要があるでしょう。
いろいろな保険がありますが、保険によって受けられる医療のレベルが同じなら、安い保険を選ぶのは当然です。国保にも加入できる会社員がより安価で加入できる組合健保を選択するのは当然だが、そんな奴に維新の政治家を批判できるのかという考えがおもしろいと思いました。


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