毎年恒例になっているユート・ブレーンがまとめた世界の大型医薬品売上高ランキングの2011年度版が発表されました。以下は、記事の抜粋です。
1位のファイザーのリピトールは2011年からパテントが切れ始め、2012年では50億ドル以上が消える見込み。2位のプラビックスは、2011年に欧州、2012年5月には米国でジェネリックが登場した。2012年のプラビックスは32億ドル以上減少して65億ドル以下となる見込み。
これらの状況から、低分子薬が世界のトップ製品の時代は2011年でいったん終了し、2012年のトップ製品はバイオ製剤のレミケードまたはヒュミラとなる。
世界のトップ医薬品の変遷を見ると、1990年代は抗潰瘍剤の時代で、前半のザンタックから後半はオメプラゾールに切り替わり、2001年からコレステロール低下剤のリピトールがトップに立った。2011年までの11年間はリピトールがトップの時代が続いたが、2012年からバイオ医薬品がトップとなり、時代が大きく変わることになる。
2012年には、9位のディオバン、10位のセロクエル、11位のシングレア、18位のジプレキサ、19位のネキシウム、20位のブロプレス/アタカンド、25位のアクトスがパテント・クリフの影響で減収となり、表の25製品のうちの9製品はマイナスが確実だ。
医薬品市場は2011年を1つのピークとして2012年から大きく変化しており、それに対応できないメーカーは生き残れないだろう。9位の降圧剤でARB製剤トップのディオバンは米国で9月にジェネリックが登場する。ヨーロッパではARBのブランド品を医師が処方できない国が増え、米国でも保険会社がブランド品の処方を制限しており、スタチンやARB製剤の市場は今後急速に縮小する。
上位25製品のうちのバイオ8製品の合計額は2011年には4.1%増の529.8億ドルだった。バイオ以外の低分子薬は、3.1%増の1005.1億ドルなので、バイオ医薬品の伸びの方が高い。2011年の上位50製品では、低分子薬の売上げ合計が初めてマイナスとなり、バイオ医薬品は10.5%増の783.0億ドルへ拡大した。バイオ医薬品の占める割合は、2010年の31.6%から2011年には34.0%へ拡大しており、バイオ医薬品の重要性が高まっている(下表参照)。
日本メーカーの創製品でランクインしたのは、クレストール(塩野義)、エビリファイ(大塚)、ブロプレスとアクトス(武田)。クレストールの世界5位は日本の創製品として最も上位にランクインした。しかし、アクトスは発がんのリスクからすでに減少しており、ブロプレス/アタカンドは他のARB製剤のジェネリックのため、欧米の2012年上半期は2桁減となっている。
売上高ランキング(単位は100万ドル)(ピンクはバイオ医薬品)
順 | 製品名 | 一般名 | 薬効等 | 2011年 | 前期比 |
---|---|---|---|---|---|
1 | リピトール | アトルバスタチン | 高脂血症/スタチン | 10,860 | -10% |
2 | プラビックス | クロピドグレル | 抗血小板薬 | 9,729 | 3% |
3 | レミケード | インフリキシマブ | リウマチ/クローン病他 | 9,016 | 12% |
4 | ヒュミラ | アダリムマブ | 関節リウマチ | 8,242 | 22% |
5 | クレストール | ロスバスタチン | 高脂血症/スタチン | 7,919 | 16% |
6 | エンブレル | エタネルセプト | リウマチ他 | 7,902 | 9% |
7 | アドエア/セレタイド | サルメテロール+フルチカゾン | 抗喘息薬 | 7,891 | -2% |
8 | リツキサン | リツキシマブ | 非ホジキンリンパ腫 | 7,386 | -6% |
9 | ディオバン/ニシス | バルサルタン | 降圧剤/ARB | 6,984 | -1% |
10 | セロクエル | フマル酸クエチアピン | 統合失調症薬 | 6,187 | 10% |
11 | シングレア/キプレス | モンテルカスト | 抗喘息薬 | 5,954 | 10% |
12 | アバスチン | ベバシズマブ | 転移性結腸がん | 5,631 | -7% |
13 | ハーセプチン | トラスツズマブ | 乳がん | 5,589 | 9% |
14 | エビリファイ | アリピプラゾール | 統合失調症 | 5,318 | 5% |
15 | ジャヌビア | シタグリプチン | 2型糖尿病/DPP4 | 5,095 | 45% |
16 | ランタス | インスリングラルギン | 糖尿病 | 5,071 | 15% |
17 | グリベック | イマチニブ | 抗がん剤 | 4,659 | 5% |
18 | ジプレキサ | オランザピン | 統合失調症薬 | 4,622 | -8% |
19 | ネキシウム | エソメプラゾール | 抗潰瘍剤/PPI | 4,513 | -9% |
20 | ブロプレス/アタカンド | カンデサルタン | 降圧剤/ARB | 4,307 | 2% |
21 | サインバルタ | デュロキセチン | SNRI/抗うつ他 | 4,247 | 21% |
22 | プレベナー7/13 | 小児肺炎球菌ワクチン | 4,145 | 13% | |
23 | コパキソン | グラチラメル | 多発性硬化症 | 4,135 | 3% |
24 | スピリーバ | チオトロピウム | COPD/抗喘息 | 4,083 | 10% |
25 | アクトス | ピオグリタゾン | 2型糖尿病 | 4,007 | -19% |
リピトール®(アトルバスタチン)やクレストール®(ロスバスタチン)などのスタチン、ディオバン/ニシス®(バルサルタン)やブロプレス/アタカンド®(カンデサルタン)などのARBは、それぞれ高脂血症や高血圧といった生活習慣病治療薬です。糖尿病も含めて、これらの生活習慣病薬の需要は今後ますます増加するはずですが、その治療薬の売り上げが落ちるだろうということは、ジェネリック出現による値下がりがそれだけ大きいということだと思います。
一方、抗がん薬はがん全般に使われる化学療法薬の売り上げは落ち、個別のがんを治療する抗体医薬や分子標的薬の売り上げが伸びています。
これらを総合すると、今後伸びるのは分子標的薬や抗体医薬などのバイオ医薬とジェネリックということになるでしょう。しかし、ファイザー社の近年の動きをみると、これまでのようなハイリスク・ハイリターンを狙う前者だけのビジネスでは、生き残りは苦しいと考えているように思います。
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つまり、「分子標的薬や抗体医薬などのバイオ医薬」を開発するために、研究に莫大な先行投資をするリスクを私企業に負わせるのは無理があるということでしょう。それで、産学協同のガイドラインを作り、国レベルで医療における開発を行なっている一例がキューバでしょうか。Fraunhofer協会のように組織することも可能でしょう。その場合は、基礎研究の部分はMax-Planck研究所が行なうことになります。
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はじめまして!文章読みました。今後また来ます!