以下は、記事の抜粋です。
今年も科学界では多くの大発見や成功があった。ヒッグス粒子の発見から火星探査機、チンパンジーの医学実験中止まで、2012年の科学界の功績を振り返る。
1. ヒッグス粒子の発見
2. 火星探査機キュリオシティの着陸成功
3. 希少な遺伝的変異種の研究
4. 新たな胎児のDNA分析方法
5. 量子テレポーテーションの伝送距離記録の更新
6. XNAの精製成功
7. スペースX、国際宇宙ステーションとの歴史的ドッキング
8. ヴォストーク湖到達
9. チンパンジーの医学実験終了へ
10. 地球サイズの惑星の発見
元記事は、wired newsの”Top Scientific Discoveries of 2012″です(記事をみる)。
医学・生物学関連のものは4つで、科学的発見あるいは発明とよべるものは3つでした。また、本ブログで取り上げたのは、関連記事に紹介した4番だけです。
3番の「希少な遺伝的変異種の研究」の項には以下のように書かれています。
過去10年のゲノム解析技術の発達で、頻度が高い病気の原因が明らかに遺伝性のものと見られるときも、これらが共通の原因遺伝子に基づくわけではないことが明らかになってきた。そのなかで、これまで分析されていた一般的な遺伝的変異種だけでなく、希少な変異種(Rare Variants)の研究が大きく進み、人間の遺伝的変異の大部分が、この数千年に生まれた希少なものであることがわかった。
下の図もついています。人口爆発以後の変異が多いことを示しています。
元論文のタイトルは、”Analysis of 6,515 exomes reveals the recent origin of most human protein-coding variants”です(論文をみる)。
論文では、ヨーロッパ系とアフリカ系のアメリカ人6,515人の15,336遺伝子を配列決定し、1,146,401個のautosomal single nucleotide variants (SNVs)の発生時期を推定しています。これによると、タンパク質をコードするSNVsの約73%、さらに障害を与えるようなSNVsの86%が5,000–10,000年前に発生したそうです。これらが「希少な遺伝的変異種」です。
この原因は「人口爆発」によるものだとしています。10,000年前には地球全体で約500万人だったヒトが今は70億人まで爆発的に増殖したため、自然淘汰が間に合わなかったそうです。このようにして、200世代前にはほとんどなかった希少な遺伝的変異が我々のゲノムに急激に蓄積したとされています。気が遠くなるような話です。
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