薬食審・第一部会 大塚の飲酒量低減薬などを審議、承認了承
以下は、記事の抜粋です。
厚労省の薬食審医薬品第一部会は11月9日、大塚製薬が承認申請したアルコール依存症患者の飲酒量を低減する薬剤などの承認の可否を審議し、承認することを了承した。飲酒量の低減を目的とした効能・効果をもつ薬剤の承認は日本では初めて。早ければ12月下旬にも承認する。
▽セリンクロ錠10 mg(ナルメフェン塩酸塩水和物、大塚製薬):「アルコール依存症患者における飲酒量の低減」を効能・効果とする新有効成分含有医薬品。
同剤はデンマークのルンドベック社が創製し、日本では両社で共同開発した。中枢神経系に広く存在するオピオイド受容体調節作用を介して飲酒欲求を抑制し、依存症患者の飲酒量を低減させる。1日1回10mgを飲酒の1〜2時間前に服用する。
最新のアルコール依存症に対する診断・治療ガイドラインでは、飲酒量低減治療が断酒に導くための中間的ステップあるいは治療目標のひとつに位置づけられている。そのため飲酒している患者に使う薬剤で、断酒状態で用いる既存のアルコール依存症治療薬3剤とは異なる。
「本剤の安全性及び有効性を十分に理解し、アルコール依存症治療を適切に実施することができる医師によってのみ処方されるよう、適切な措置を講じること」との承認条件をつけた。対象患者が広がる可能性があるためで、使用するにはメーカーや学会主催する講習会に参加する必要がある。また、他のアルコール依存症治療薬と同様に、「心理社会的治療と併用すること」と添付文書に明記する。海外では17年8月現在で42の国または地域で承認されている。
セリンクロ®(一般名:ナルメフェン)は、飲酒をやめることではなく、患者のアルコール摂取量を減らすことを目的に開発されました。1杯目の酒を飲む前に服用することで飲酒量の減少効果が期待できます。
以前にも書きましたが、アルコール依存症の治療上の大きな問題は、患者の多くが禁酒という目標を受け入れたくないために、治療に関心を示さないことです。セリンクロ®を用いた全く異なるアプローチにより、患者に治療への躊躇をさせず、積極的に取り組ませることが期待されます。
「アルコール中毒症 臨床と実験研究」で2007年に掲載された研究報告によると、ナルメフェンを服用したフィンランド人の男性と女性を対象とした治験では、飲酒量の多かった日数が服用前から45%減少した。プラセボを服用した対照群では3分の1の減少にとどまった。
このように、セリンクロ®を服用すれば、少しずつアルコールの摂取量を減らすことができるため、患者はアルコール問題を制御することができるようになると思われます。
アルコール中毒症と診断された極端な患者だけではなく、どうしても飲み過ぎてしまうために、肝機能障害をおこしているような中等度の「中毒患者」にも処方できればと思います。
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セリンクロ(ナルメフェン)の作用機序と副作用【アルコール依存症】より引用
コメント
お世話になります。
本記事で使用されている作用機序のイラストは当サイト(新薬情報オンライン)で作成したものです。
使用いただいて誠に嬉しい限りですが、可能でしたら図の上部もしくは下部にリンク(https://medicalcampus.jp/di/archives/3722)を掲載いただけないでしょうか?
ご検討いただけますと幸甚です。
コメントありがとうございました。リンクを貼らしていただきました。