SU薬とグリニド薬の薬理作用と使い分けなどなど

SU薬とグリニド薬の薬理作用と使い分け
以下は、記事の抜粋です。


第2世代SU薬
⇒グリベンクラミド、グリクラジド
第2世代SU薬のインスリン分泌促進作用は、非常に強力です。グリベンクラミド(オイグルコン、ダオニール)1.25mgの投与でも、急激な血糖降下が起きることがあります。空腹時の高血糖を改善するのがメインで、食後高血糖を特異的に改善することはできません。食事摂取に合わせて分泌されるインスリン量が調節されるわけではないため、むしろ食間には空腹感が生じます。また、強力に膵臓のβ細胞を刺激してインスリンを分泌させるために、β細胞が疲弊してインスリン分泌がうまくいかなくなる「二次無効」を起こしやすいとされています。体重増加の副作用もあります。

第3世代SU薬
⇒グリメピリド
グリメピリド(アマリール)は、腸管からの吸収がほぼ100%で、1時間以内に吸収が始まります。インスリン分泌促進作用はマイルドです。急激な低血糖リスクは比較的低く、空腹感も少ない特徴があります。一方で、従来のSU薬と同等の血糖降下作用を示しますが、これは、インスリン分泌促進作用のみならず、インスリン感受性改善作用があるためと言われています。

グリニド薬
⇒ナテグリニド、ミチグリニド、レパグリニド
ナテグリニド(ファスティック、スターシス)をはじめとするグリニド薬は、SU剤と同様に、膵臓のβ細胞の受容体に結合して初期インスリン分泌を促進します。30~40分で初期分泌を立ち上げ、食後60~120分の高血糖を抑えます。グリニド薬が適応となるのは、食後の高血糖のみが問題になるような初期(軽症)の糖尿病患者です。グリニド薬は、作用発現が非常に早く、血中から速やかに消失することから、「二次無効」は起こしにくく、体重増加作用も軽微だと言われています。

SU薬・グリニド薬の副作用
副作用で最も問題になるのが、低血糖です。血糖値が60mg/dL以下になると、初期症状としての空腹感、手指振戦、心悸亢進などが現れてきます。50mg/dL以下になると眠気など意識に関する症状が現れ、意識低下、昏睡へと進んでしまいます。これらは、長時間の運動、他剤との相互作用、食事をしない、大量のアルコール摂取などが引き金になります。


先日、糖尿病治療の勉強会に参加してきました。グリニド系の薬物についてあまり知らなかったのでとても勉強になりました。上記のように、標的分子はSU薬と同じで、膵β細胞のスルホニルウレア受容体1(SUR1)と結合し、ATP感受性カリウムチャネルを閉鎖することで、細胞膜の脱分極をひき起こします。その結果、電位依存K+チャネルが開口、細胞内Ca2+濃度が上昇し、インスリン分泌が促進されます。

最近急激に売り上げを伸ばしているシタグリプチン(グラクティブ®、ジャヌビア®)などのDPP-4阻害薬もインスリンの分泌を改善する薬物です。DPP-4で分解されるインクレチン(GIPとGLP-1)は、受容体に結合するとβ細胞内cAMP濃度を上昇させます。これが低分子量GTP結合タンパク質Rap1のGEF(グアニンヌクレオチド交換因子)であるEpac2を活性化し、インスリン分泌を促進します。

SU薬には、ATP感受性カリウムイオン(KATP)チャネルの活性化に加えて、Epac2を直接活性化して、インスリン分泌を促進する働きがあります。勉強会の演者の話では、グリニド系にこのような作用があるかどうかはまだわからないという事でした。

いずれにしても、グリニド系は、速く(5-15分)効いて、速く(数時間)効果がなくなるという点がSU薬と異なり、食事の直前に飲めば食後高血糖をうまく抑制できるが、空腹時血糖にはあまり影響しないということです。軽症で、メトホルミンだけでは食後高血糖が改善されない場合などがグリニド系の登場になるのかもしれません。問題は、αグルコシダーゼ阻害剤と同様、毎食直前に飲むということが守れない高齢者などには処方しにくいことです。

勉強会で印象に残ったことを以下に少し紹介します。
1.糖尿病治療のABCD(A1c、Blood pressure、Cholesterol、Don’t smoke)
2.腎機能に問題なければ、まずはメトホルミンを使う。
3.体形が重要。肥満型はインスリンの分泌は良く、痩せ型は悪い場合が多い。
4.インスリンは、若い患者ではBolus3回が基本、高齢者では朝1回(Basal+Bolus)。
5.GLP-1アナログ(リラグルチド、ビクトーザ®)は、副作用の「むかつき」が逆に食欲抑制に効果があり、若い肥満型の患者で著効を示すことがある。

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コメント

  1. taniyan より:

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    tak先生
    お早う御座います、何時も専門性高い記事感謝です。
    自分は運よく糖尿とは無縁なんですが。
    自分の主治医なんか新薬登場しても薬品名言ってもそんなの知らんな、新しいのなんか止めた方がいいよ、でお終い。
    良くない事ですが自分は先生のように新薬紹介記事見つけるとUSAからすかさず個人輸入。
    効果確認できたら主治医に処方要望。
    これからも期待しています。
    それでは今日も講義&研究活動お疲れ様です。
                  taniyan

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