耳鼻科医院を開業している同級生の「嚥下障害への取り組み~在宅における新たなアプローチ~」という講演を聴きに行ってきました。多くの嚥下障害例がビデオで紹介されました。
嚥下障害は、脳梗塞などの後遺症として発生し、患者の多くは高齢者です。嚥下障害のある患者は、誤嚥による肺炎などをおこし易いとされています。安全や管理のため、多くの病院では、このような患者には胃瘻(PEG, percutaneous endoscopic gastrostomy)をつくり、胃から直接栄養を投与することが多いです。
在宅の患者にも、嚥下障害は発生します。胃瘻が作られた患者もいます。しかし、高齢者の多くは食事を楽しみにしています。できれば胃瘻ではなく、経口で食べさせたいと願う家族と主治医からの依頼で、その耳鼻科医は、経鼻的喉頭鏡で嚥下動作を観察し、嚥下障害の程度を診断します。パソコン画面で、患者の家族に内視鏡画像を供覧し、食事の指導や手術を勧めます。経口摂取不可能という診断もあります。
良く噛むことや食事にトロミ(粘性)をつけることで誤嚥が減る。ベッドを少しおこし、あごを引いた体勢が良い。プリンは、誤嚥し易いなどを学びました。講演中、何度もつばを飲み込みました。1回の在宅患者訪問に、最低1時間かかります。投薬などはしないので、診療報酬は少なく、「これは奉仕活動だ」と、同席した別の同級生が言っていました。「尊敬するが、自分にはできない」とも。
会場では、老人病院勤務の医師から、在宅でなく、病院や施設でも、同様の嚥下障害診断はできないか?との質問がありました。病院や施設では、家族ではなく職員が食べさせるので、誤嚥がおこった場合、訴訟になる可能性が高いので難しいとの答えでした。
講演の後、また別の同級生が、自分は老人病院に勤め、多くの患者さんに胃瘻を作っているのだが、自分には胃瘻を作って欲しくない、と言っていました。彼は、患者と家族の関係をみていると、長生きが幸せかどうかわからなくなってきたとも言っていました。医療や人生の意味を考える時間でした。
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