現在および元ヘビースモーカーの肺がん死亡率、低線量CT検診で通常X線検診よりも2割低下

肺がん死亡率、CT検診で2割低下 X線より有効 米

以下は、記事の抜粋です。


低線量の胸部CTによる定期検診で、肺がんによる喫煙者や元喫煙者の死亡率が20%下がることが米国の臨床試験でわかった。胸部X線撮影による検診より、がん発見の有効性が高いことを示す結果で、国立がん研究所(NCI)が11月4日、発表した。

精度が高いCT検査は小さな肺がんも見つけられ、早期治療につながると考えられているが、実際に死亡率が下がるかどうかはよくわかっていなかった。

NCIなどは、喫煙本数や過去の喫煙歴などから肺がんの危険が高いと考えられるものの、症状が出ていない55~74歳の男女約5万3千人に対し、ヘリカルCT検査を受けるグループと、胸部X線検査を受けるグループに分けて、肺がんによる死亡を5年後まで追跡した。その結果、胸部X線検査では442人が肺がんで死亡していたが、CT検査では2割少ない354人だった。また肺がん以外の死亡率も、CT検査のグループでは7%下がっていた。


NCIによるニュースのタイトルは、”Lung cancer trial results show mortality benefit with low-dose CT:Twenty percent fewer lung cancer deaths seen among those who were screened with low-dose spiral CT than with chest X-ray“です(ニュースをみる)。また、同データに基いた論文も発表されています(論文をみる)。

米国では、肺がんががん死因のトップです。2002年の場合、169,400例の新しい肺がん患者がみつかり、154,900例の肺がん死があったとされています。また、肺がん死は全がん死の約25%を占めています。近年は、喫煙者が減少し、肺がんによる死亡率も少し低下していますが、肺がんリスクの高い人々はまだまだ多いです。

2007年の調査では、約9000万人の米国人が過去にタバコを吸った経験があり、約半分はその時点でもまだ吸っていました。喫煙を中断すると肺がんリスクは減少しますが、一度も吸ったことがない場合よりもリスクは高いままです。つまり、今後数十年は喫煙による肺がんが重要な健康問題であり続けるだろうということです。

肺がんの場合、発見時の臨床病期(clinical stage)によって、治療後の生存率がほぼ決まると考えられています。そのため、通常のX線検査よりも解像度が優れ、がんを発見しやすい低線量CTでスクリーニングする方が良いと思われます。しかし、元記事にも書かれているように、「低線量」とはいっても被爆量はかなり多いので、被爆による発がんの危険性や、偽陽性による過剰検査・治療の可能性も増えます。これらのベネフィットとリスクを確認するために、本臨床試験のような大規模ランダム化臨床試験が行われました。

この臨床試験のポイントは、対象を現あるいは元ヘビースモーカーに限定していることです。具体的には、タバコを1日1箱以上を30年以上吸っているヘビースモーカー、あるいは過去に同様の喫煙習慣があって禁煙後15年未満の元スモーカーです。このようなヘビースモーカーの場合には、リスクよりもベネフィットが多いというのがこの臨床試験の結論です。

ですから、元記事の「厚生労働省の研究班は2007年の指針でCT検査について『死亡率が減る効果を判断する証拠は不十分』としている。」とはまったく矛盾していません。この文章では検査対象をヘビースモーカーに限定していないからです。

エビデンスのない私的意見ですが、非喫煙者が人間ドックなどで肺CT検査を定期的に受けることは、被爆などを考えるとお勧めできません。しかし、ヘビースモーカーの場合は、低線量(これが大切)ヘリカルCT検査を受けられるのがよいと思われます。できれば、まずタバコを止めましょう。

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