転移性の非小細胞肺がんに対するキートルーダ®(ペムブロリズマブ)と化学療法の併用

肺がん患者に「免疫療法」を従来の化学療法と併用することで生存率を著しく高めることに成功
以下は、記事の抜粋です。


ニューヨーク州立大学のリーナ・ガンディ博士らが、肺がん患者に対して化学療法に併用する形で免疫療法を行うことで、生存率を飛躍的に高めることに成功したと発表しました。

Pembrolizumab plus Chemotherapy in Metastatic Non–Small-Cell Lung Cancer

研究では世界16か国の34歳から84歳までの616人の進行性肺がん患者を対象に、化学療法に免疫療法を加える治療を行いました。被験者のうち約3分の2の患者には化学療法に加えて免疫療法が施され、残りの3分の1の患者には化学療法とプラセボ(偽薬)が与えられました。

免疫療法としてはメルク社製のpembrolizumabやKeytrudaと呼ばれるチェックポイント阻害薬が採用されました。チェックポイント阻害薬によって、免疫が持つ本来の攻撃能力をがん細胞に対して発揮させようというのが実験で採用された免疫療法です。

10カ月半に及ぶ追跡調査では、免疫療法を追加した被験者の死亡率が半減することが確認されました。免疫療法を併用しない被験者の生存期間の中央値は11.3カ月でしたが、併用した被験者の生存率は12カ月経過時点で69.2%と、化学療法だけよりもはるかに高い生存率が確認され、化学療法に加えて免疫療法を併用することで得られる高い効果が確認されています。


記事では、「生存率を著しく高めることに成功」と書かれていますが、論文をみると臨床試験の第2相の結果の発表ですので、まだ断定的なことは言えないと思います。

また、記事では化学療法単独と化学療法+免疫療法の効果の違いが分かりにくい書き方ですが、論文要約には、以下のように書かれています。


After a median follow-up of 10.5 months, the estimated rate of overall survival at 12 months was 69.2% (95% CI, 64.1 to 73.8) in the pembrolizumab-combination group versus 49.4% (95% CI, 42.1 to 56.2) in the placebo-combination group.
10.5か月のフォローの結果、12カ月後の生存率は、併用群で69.2%、プラセボ群で49.4%だった。

Median progression-free survival was 8.8 months (95% CI, 7.6 to 9.2) in the pembrolizumab-combination group and 4.9 months (95% CI, 4.7 to 5.5) in the placebo-combination group .
病気の進行がない状態での生存期間は、併用群で8.8カ月、プラセボ群で4.9カ月だった。

Adverse events of grade 3 or higher occurred in 67.2% of the patients in the pembrolizumab-combination group and in 65.8% of those in the placebo-combination group.
重篤な副作用は、併用群で67.2%に認められ、プラセボ群では65.8%だった。


論文の結果から分かるように、肺がんが治癒したわけではなく、生存期間が有意に延長したという話です。また、試験の中で免疫療法単独群との比較が行われていないのも残念です。

いずれにしても、免疫療法が肺がん治療で、ますます重要になることは間違いなさそうですので、この試験で使われたキートルーダ®(一般名:ペムブロリズマブ)や日本製のオプジーボ®(一般名:ニボルマブ)を安価で使えるようになることが今後の課題だと思います。

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