炭水化物は体に悪い?脂質をたくさん摂るほど健康に良い?:2017年世界一に選ばれた科学論文を解説
本ブログでも9月13日と10月6日に書きましたが、ランセット誌に掲載された”Associations of fats and carbohydrate intake with cardiovascular disease and mortality in 18 countries from five continents (PURE): a prospective cohort study”(論文をみる)という論文を「糖質制限ダイエット」を正当化する論文として紹介するのは間違っています。上の記事は、私とは別の根拠で批判しています。以下にその抜粋を紹介します。
本研究から得られた「結果」は次のようなものです。
1.「炭水化物を“最も多く”食べていた人たち」は「“最も少なく”食べていた人たち」と比べて、全死亡率が28%高い。
2.「総脂肪摂取が“多い”人たち」は「総脂質摂取が“最も少ない”人たち」と比べて全死亡率が低い。「“最も多い”人たち」は死亡率が23%低い。
3.総脂肪だけでなく、脂肪の種類によらず「脂肪摂取が“多い”人たち」のほうが「摂取が“最も少ない”人たち」と比べて死亡率が低い。
炭水化物
今回の研究で使用されたデータの多くが貧しい国に住む人々のものだという事実に触れました。このように極端に高い炭水化物からのカロリー摂取は、Poverty diet(貧しい人々の食事パターン)を示唆するものと考えられます。したがって、観測された炭水化物と死亡率の関連は炭水化物自体の効果ではなく、彼らのおかれている貧困の影響やPoverty dietによる栄養失調の影響ではないかと考えることができます。
総脂質
この研究で「最も脂質をたくさん摂取した人たち」と定義されたグループは、わずかに推奨ラインを越えてはいるものの、そんなに過剰に摂取しているとは言えずむしろ健康的な摂取量の範囲内とみることができます。これに対して比較対象のグループの摂取量は、推奨摂取割合の下限(20%)の約半分であり、相当脂質の摂取量が少ない集団であると言えます。つまり、「脂質をたくさん摂取した人の死亡率が低い」ではなく「脂質摂取が通常の人と比較して、極端に少ないひとの死亡率が高い」ことを示していると考えられます。
要するに、食物中の炭水化物比率が高いのは極端に貧しいヒトのグループで、脂肪の率が高いのはどちらかといえば先進国の豊かなヒトのグループであり、死亡率が前者で高く後者で低いのは、そういった社会経済状況を反映された結果である。ということです。
興味深い推論ですが、これにも検証が必要だと思います。いずれにして、糖質制限ダイエットを正当化する論文ではありません。
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