シニアは「コレステロール高め」が長生き??

【あさイチ 親の食事常識が変わる!】という7月12日に放送されたNHKの番組で放送された内容だそうですが、シニアは「コレステロール高め」が長生き 65歳を超えたら肉をモリモリ食べよう!というひどい記事がありました。


リポーターの遠藤亮アナ「一般的に総コレステロールの基準値は、男女とも120~220とされますが、最新の研究では、65歳を超えたらコレステロール値が高めのほうが長生きすることがわかってきました。

遠藤アナが、東京都健康長寿医療センター研究所が行なった、「総コレステロール値と寿命の関係」の研究報告を説明した。それによると、65歳以上の高齢者を8年間追跡調査した結果、総コレステロール値が「やや高い人」(男:185~208、女:207~229)の生存率が一番高く、「低い人」(男:156以下、女:182以下)が早死にする傾向がはっきりみられた。


この研究を行なった新開氏は、「コレステロールは悪者扱いされてきましたが、基準値は中年までの数値なのです。65歳以上の目標は元気に長生き、つまり健康長寿ですね。だから、年齢によって基準値を変える必要があります。私たちは、65歳以上の理想値は、男性180~260、女性200~260と考えています」と語り、NHKの柳澤解説委員の「私はNHKの健康診断を受け、総コレステロール値が228で、『高い』と言われました」との発言に対して、「素晴らしい数値です! 柳澤さんの年齢(63歳)なら理想的ですね」と言ったそうです。

しかし、ここで出てきた「総コレステロール値」は、HDLとLDLという2種類の異なるコレステロールを合わせて測った値です。心血管リスクと関連するのはLDLだけですので、「総コレステロール値」と寿命の関連を調べても、科学的な意義は低いです。評価の高い医学雑誌に掲載される論文として発表できる研究とは思えません。

また、記載から判断すると、この研究は観察試験です。観察試験では、研究者は積極的な介入を行わず、対象者を観察することで研究を行います。例えば、脳出血をおこした人のコレステロール値を調べると、高い人よりも低い人の方が多かったというような結果が得られます。このような研究では、関連性は示唆できても因果関係は証明できません。他の病気で栄養失調状態になりコレステロールが低いヒトのデータも含まれてしまいます。

一方、スタチン投与によって高LDL値を下げると心血管リスクが低下することを示した研究の多くは、観察試験ではなく二重盲検無作為割付臨床試験です。具体的には、対象者を、乱数表などを使って、ランダムに二つの群に分けます。介入群には、評価しようとする治療や予防を行い、対照群には、評価しようとする薬と見かけは同じだが薬効のないプラセボを投与します。さらに、治療者もどの患者にプラセボが投与されているかわからないようにします。

このように、観察試験と二重盲検無作為割付臨床試験、どちらの結論が真実に近いかは明らかです。

「シニアは『コレステロール高め』が長生き」というとんでもない話は別として、高齢者も「栄養失調」にならないように、しっかりと肉などを食べるべきであるという意見には同意します。というのは、コレステロール値はこれまでの学説が覆され、食事の影響をそれほどは受けないことが明らかになっているからです。

高LDL値のヒトは、肉をモリモリ食べても良いけど、スタチンも飲みましょう!

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