フコース除去抗CCR4ヒト化モノクローナル抗体モガムリズマブ(KW-0761)‐適応はATLL

【協和発酵キリン】抗CCR4ヒト化モノクローナル抗体を国内申請‐適応はATLL

以下は、記事の抜粋です。


協和発酵キリンは4月26日、成人T細胞白血病リンパ腫(ATLL)治療薬「KW-0761」の国内申請を行った。独自の高活性抗体作製技術「ポテリジェント」を応用した抗CCR4ヒト化モノクローナル抗体で、2012年の国内発売を目指す。

「KW-0761」は、旧協和発酵が開発したATLLの90%に高発現するケモカイン受容体CCR4のヒト化抗体。CCR4陽性ATLLの適応で承認申請された。ATLL細胞表面に発現するCCR4に抗体が結合することで、抗体依存性細胞傷害活性(ADCC)を介してマクロファージやNK細胞を誘導し、抗腫瘍効果を発揮する。上市されれば、世界初のポテリジェント技術を使った抗体となる。

再発・再燃したCCR4陽性のATLL患者を対象とした国内第Ⅱ相試験では、「KW-0761」単剤で、奏効率50%の高い有効性が示されたほか、良好な忍容性も確認された。
また、診断薬子会社の協和メデックスが、ATLL細胞で発現するCCR4蛋白を検出する体外診断薬について、国内申請を行った。申請された診断薬は、免疫組織化学的手法とフローサイトメトリーを原理とした2製品。「KW-0761」を投与する前に、ATLL細胞にCCR4が発現しているかを調べ、投与患者の選別を行う。


ATLLは、1977年に高月清氏らによって最初に報告された悪性リンパ腫の一種で、大部分が白血病化します。1980年、エイズウイルスで有名なRobert Gallo氏が原因ウイルスを発見し、HTLV-1(human T-lymphotropic virus type-I)と命名しました(ATLLの説明をみる)。(余談ですが、Gallo氏はエイズウイルスを発見し、HTLV-IIIと命名しましたが、ノーベル賞委員会には認められませんでした。)

HTLV-1の感染は、主に母乳による母子感染で、性行為による男性から女性への感染もあるそうですが、成人後の感染による発症は報告されていません。キャリアの発病率は低く(生涯発病率が1~5%)、喫煙者が肺がんになる確率より低いと言われているそうです。

HTLV-1の感染は細胞依存性で、CCR4受容体を介して細胞同士が接着(ウイルスシナプスを形成)して初めて、細胞から細胞への感染が成立することがわかっています。また、HTLV-1感染細胞はCCR4受容体を発現しており、遊走性と組織浸潤性が高く、これらが様々な症状と関連すると考えられています。

Mogamulizumab (KW-0761)は、CCR4受容体に結合することでマクロファージやナチュラルキラー細胞を誘導し、がん細胞を攻撃させるADCC (antibody-dependent cell cytotoxicity)によって抗ATLL作用を発揮するとされています。ポテリジェントとは、抗体糖鎖中のフコースという糖を除く技術のようです。この「フコース除去抗体」を用いると、ADCC作用が100倍以上増強されることが動物実験では確認されています。

第2相試験では、27名のATLL患者に1.0mg/kgのKW-0761を1週間間隔で8回投与し、その有効性及び安全性を評価しました。主要エンドポイントoverall response rate (ORR)でみた結果、完全反応7例、部分反応7例で、奏効率は54%であり、これまでの報告(7~39%)と比べてかなり優れていました(報告をみる)。

夏目雅子さんの命を奪ったとされ、現在でも予後不良のATLLですが、CCR4受容体を分子標的とする治療の発展に期待したいと思います。

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