乳酸菌やビフィズス菌、健康に「有効性ない」との研究相次ぐ…オリゴ糖も効果は不明
以下は、記事の抜粋です。
人間の大腸には、たくさんの細菌が常に生息しています。最近の研究では3500種類を超える細菌が大腸で生きているようです。
これまでは、ビフィズス菌や乳酸菌と呼ばれる腸内細菌が、下痢などを改善して腸を快調に保つ作用から、「善玉菌」として尊重され、その一方で病原性の大腸菌やウェルシュ菌などが、腸炎などを起こす「悪玉菌」としてとらえられてきました。
一方、大人の腸内細菌としては多数を占めている、バクテロイデスと呼ばれる細菌などは、「日和見菌」というような名称で呼ばれ、悪玉でも善玉でもなく、それほど大きな役割は果たしていない、という扱いでした。ところが最近になり、実は日和見菌が、肥満や糖尿病の予防効果を持っている、という知見が相次いで発表されるようになりました。
現在広く使用されている分類によれば、大人の腸内細菌叢は、「日和見菌」のバクテロイデス門がもっとも多く、次に乳酸菌が属するファーミキューテス門という順です。この門というのは腸内細菌の大きな分類で、このなかには多くの種類の細菌が含まれているのです。
最近の知見においては、比率的にバクテロイデス門が減少し、ファーミキューテス門が増加すると、肥満や血糖上昇に結び付きやすいという、複数の報告があります(論文をみる)。
乳酸菌やビフィズス菌には、風邪などの感染症や抗生物質による下痢の予防などの効能があるとされていますが、13年の「Lancet」誌の論文によると、乳酸菌とビフィズス菌の合剤を抗生物質と一緒に使用しても、偽薬と下痢や腸炎の発症頻度に違いはありませんでした(論文をみる)。また、12年の「The American Journal of Clinical Nutrition」誌の論文によると、厳密な研究において、乳酸菌による風邪の予防効果は認められませんでした(論文をみる)。
乳酸菌が免疫力を強化して感染を予防した、というような報告が多数あるのですが、その研究としての厳密性はそれほど高いものではなく、菌を販売しているメーカーが関与している研究がほとんどなので、その信頼性もそれほど高いとはいえないのです。
乳酸菌が悪玉菌であるという根拠もあまりないのですが、善玉菌であるという評判も、それほど根拠のあるものではないようです。
記事の著者の「つまり、単独の細菌が多ければ健康なのではなく、多様な細菌がバランス良く存在していることが、健康のバロメーターといえるのかもしれません。」というコメントが正しいかどうかはわかりませんが、乳酸菌やビフィズス菌、あるいはオリゴ糖が特定の病気を予防したり、治療効果があるという話は怪しいという主旨には強く同意します。
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コメント
このブログ記事に関連して、以下の本が興味深いのではないかと思い、
コメント欄にて、ご提示します。
原著
“The Hidden Half of Nature:
The Microbial Roots of Life and Health”
by David R. Montgomery, Anne Biklé
邦訳:片岡夏実(訳)
『土と内臓 微生物がつくる世界』(2016年、築地書館)
風土病とか、水が合わないという現象について考える契機になります。
瘀血という病気もモンスーンの風土病です。