“AI for legal”は弁護士の職を奪うか?

AIによる弁護士なしの「本人訴訟」が爆増、裁判所への負担も増大
以下は、記事の抜粋です。


アメリカでの裁判で弁護士を付けずに訴訟を起こす本人訴訟が生成AIの普及後に急増していると、MITと南カリフォルニア大学の研究者が報告しました(論文をみる)。

研究は、2005会計年度から2026会計年度までの非受刑者による連邦民事訴訟約450万件と、連邦裁判記録システム・PACERの記録約4600万件を分析しました。このうち、本人訴訟の割合は長年約11%で安定していましたが、2025会計年度には約17%まで上昇したことがわかりました。

本人訴訟の増加は、特許や証券詐欺のように専門知識が必要な分野ではなく、民権訴訟や消費者信用をめぐる争い、差し押さえ関連の訴訟など、文書作成の型が比較的決まった分野に集中していたとのこと。これは訴状や申立書を整った形式であればAIが容易に作成を補助してくれるからだと研究者らは推測しています。

問題は見た目が整った法的文書が必ずしも有効な主張を含んでいるとは限らないことです。例えばミネソタ州のドナルド・ソーブ氏の事例では、ChatGPTとClaudeを使って作成した訴状や50件の追加書面、判例分析が提出されましたが、裁判所は最終的に明確な請求が示されていないと判断しています。

こうした事例では、手書きの訴状であれば比較的早く退けられた内容がAIによって専門的に見える文書になったことで、裁判所側により多くの確認作業を発生させているとのこと。各書面は職員が受理し、記録した上で公開する必要があるため、判事が判断を下すまでに相応の労力がかかるそうです。報告によれば、事件発生から180日以内の記録項目数はAI普及前の平均と比べて2025年には158%増加しており、申立てや回答、命令、期日の設定といった記録の処理で裁判所が膨大な時間を消費していることになります。

AIの利用は文書そのものにも表れています。研究チームが2019年から2026年までの連邦民事訴状1600件を抽出し、PangramのAI文書検出で調べたところ、AI生成テキストを含む訴状の割合は2023年の1%から2026年初めには18%に上昇していました。

ただし、AIによる法律支援は一面的に否定できるものではありません。研究者らは「弁護士費用を負担できない人にとって、AIは法的情報にアクセスし文書の体裁を整える手段になり得る」と指摘しています。

それでも、訴訟を始めるコストだけが下がれば、裁判所や相手方にかかる処理コストは増えます。AIが司法参加の入口を広げる一方で、人間の判断と事務処理に依存する裁判制度の限界を明らかになったといえます。


他の記事でも、アメリカでは弁護士をつけない本人訴訟が倍増(4万件超)しており、提出された訴状の約2割はAIによって生成されたようだと報告されています。韓国でも、AIに頼って一人で訴訟に臨むケースが増加していると報告されています(記事をみる)。

日本では「AIを使った本人訴訟」がブームになる兆候は今のところ見られず、データ上でもむしろ弁護士をつけない本人訴訟自体が減少傾向にあるそうです。

ところが、日本では「本人訴訟」は増えていないようです。Geminiは、以下の理由などをあげています。

1. 弁護士法第72条(非弁行為の禁止)の壁日本には、弁護士資格を持たない者が報酬を得て法律業務や法的アドバイスを行うことを禁じる「非弁(ひべん)行為の禁止」という厳格な法律(弁護士法72条)があります。企業が「個別の裁判でそのまま使える訴状を自動生成するAIサービス」を有料で提供すると、この法律に抵触する恐れがあります。そのため、国内のリーガルテック企業は、弁護士法に配慮して「完全無料の非営利モデル」 や「一般的な情報提供・論点整理」 に機能を限定せざるを得ず、アメリカほど自由にAI訴訟ツールを展開・普及させづらい環境にあります。

2. 裁判のデジタル化(IT化)の進展と逆転現象最高裁判所の司法統計などに基づくと、地方裁判所の民事裁判における「原告・被告の双方が弁護士をつけない本人訴訟」の割合は、ここ約10年間で20%から7%へと激減しています。これは、弁護士の数が増え、アクセスしやすくなったためとIT化へのハードルがあります。日本の裁判所ではオンラインで書面を提出できるデジタル化が全面的に導入され始めていますが、これはITツールを使いこなす弁護士にとって有利な仕組みであり、一般のIT弱者や個人が一人で対応するにはかえってハードルが高くなっているという側面もあります。

AIはどんどん発達するので、上の2つの理由はクリアできそうです。そのうち一流の弁護士の能力を超えるAIが出てくると思います。弁護士法でどこまでブロックできるかですね。

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