「ゲノム編集」作物じわり=品種開発が効率化、欧米での実用化が進む

「ゲノム編集」作物じわり=品種開発が効率化、安全懸念も-米
以下は、記事の抜粋です。


遺伝子組み換えに代わる新技術として「ゲノム編集」を使った作物の開発が米国で本格化してきた。既に菜種で商品化され、コメやイモ、大豆の市場投入計画が進む。短期間で効率的に新品種を生み出せるが、その半面、規制当局の対応が遅れ、安全性への懸念が指摘され始めた。

米バイオベンチャー企業サイバスは2014年11月、初のゲノム編集作物として、除草剤をかけても枯れない菜種を発売。「遺伝子組み換えでない」と強調し、大手穀物商社カーギルと組んで、食用油や家畜飼料の原料として農家に売り込む。

同業のケイリクストは、トランス脂肪酸を含まない大豆などを開発し、数年内に売り出す。開発責任者は「遺伝子組み換えのような規制がないため、開発期間や費用を大幅に圧縮できる」とアピールする。

ゲノム編集は、ゲノムの特定部位を人工的に改変し、新たな性質を生み出す技術。自然界の突然変異に近く、他生物の遺伝子を組み込むこともないため、米農務省は「遺伝子組み換えのような特別な規制は不要」との立場を示す。

ただ、オバマ政権は先に、農業バイオ業界の急速な技術革新への対応が不十分だとして、規制の抜本的見直しに着手した。消費者側からは「健康や環境へのリスクを考え、ゲノム編集作物も規制対象に加えるべきだ」との声が上がっている。


以前の記事でも紹介しましたが、これまでの「遺伝子組換え」技術では、遺伝子を操作した後に他種の遺伝子がゲノムの中に残り、組換え生物であることの目印になったのですが、「ゲノム編集」技術では、外来遺伝子を残さないで遺伝子の改変ができます。つまり、今の定義では「遺伝子組換え生物」に該当しない「遺伝子改変生物」が作成可能です(記事をみる)。

上の記事の「除草剤をかけても枯れない菜種」を調べてみました(Cibus社のホームページをみる)。このアブラナ(SU Canola™)は、グリホサート(ラウンドアップ®)などのSU(sulfonylurea)系除草剤に耐性を持つようです。メカニズムは、SU系除草剤の標的分子であるアセトヒドロキシ酸合成酵素をコードする遺伝子に点突然変異(G→T)を入れて、574番目のアミノ酸のトリプトファンをロイシンに換えると、酵素の立体構造が変わって除草剤が結合できなくなる、というものです(説明をみる)。

ゲノム全体で2箇所の点突然変異(G→T)しかないものを規制することは難しいでしょう。無理に規制したら、品種改良そのものができないことになりそうです。

関連記事
今年の「画期的発見」は遺伝子編集技術「クリスパー」
ゲノム編集―62個の内在性レトロウイルス遺伝子を一気に改変、ブタ臓器のヒトへの移植が可能に!?
外来遺伝子が残らない遺伝子改変技術にどう対応する?

コメント

タイトルとURLをコピーしました