軽症と中等症のうつ病では抗うつ薬の効果は乏しい

プライマリケア医のうつ病治療に抗うつ薬はいらない?
以下は、記事の抜粋です。


うつ病の薬物療法講座で決まり文句のように教えられるのは、「SSRIを含む新規抗うつ薬は、これまでの三環系抗うつ薬よりも副作用が少ないため、プライマリケア医やかかりつけ医も用いやすい」というものだ。

2つの重要なエビデンスを見てみよう。1つ目は、2009年に発表されたミルタザピン (レメロン®、リフレックス®) の治験だ。主要評価項目は、ハミルトンうつ病評価尺度(Hamilton Depression Rating Scale:HDRS)。投与開始前からの得点の変化量は、ミルタザピン30mg群で13.8点、プラセボ群で10.4点(P=0.0065)となり、 30mg群のプラセボ群に対する優越性が検証された。

2つ目は、2010年にJAMA誌に掲載されたメタ解析論文。HDRS得点が24点程度を下回るうつ病では、抗うつ薬の効果とプラセボによる効果にほとんど差がない。ただし、それ以上の得点のうつ病、すなわち重症度の高いうつ病であれば、抗うつ薬の効果がプラセボに優るとしている。すなわち、軽症と中等症のうつ病では抗うつ薬の効果は乏しいことを示している

かつては抗うつ薬療法開始時の説明として「抗うつ薬が効きますから、きちんと飲んでください」が医師の常識であった。しかし、少なくとも軽症から中等症のうつ病患者に対しては、この説明は不適切ということになる。

エビデンスを重んじて説明するとすれば、うつ病が軽症であれば、「臨床試験のデータをみると、プラセボでもある程度うつ病が良くなることが分かっていますが、抗うつ薬を飲んでみますか」であり、「効果はプラセボとほとんど変わらないというデータもありますが、試してみますか」であろう。

軽症のうつ病はプライマリケア医が治療にあたり、中等症から重症のうつ病は精神科医に依頼した方が良いと考えるなら、軽症うつ病だけを診るプライマリケア医は、抗うつ薬を用いる必要はないということになる。


私が精神科医をしていた時はまさに、うつ病の診断がついたら「抗うつ薬が効きますから、きちんと飲んでください」と患者に指導するというのが正しいとされていました。

軽症の場合は、プラセボ効果が大きいこと、抗うつ薬とプラセボとの差はプラセボ効果の半分以下であることを良く認識して薬物治療を行うべきでしょう。症状によって抗うつ薬の効果が異なるとすると、症状は連続してみえても、軽症のうつ病と重症のうつ病とでは、脳内でおこっている現象がまったく異なる可能性もあると思います。

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