名医が言わない言葉10選

「どうしてこんなになるまで放っておいたんですか?」など名医が言わない言葉10選
以下は、記事の抜粋です。


テキサスA&M大学のレナード・L・ベリー氏らは、臨床医20人へのインタビューや、複数の文献を通じて、「絶対に口にしてはならない言葉(Never-Words)」の具体例を探しました。

例えば、「医師はよく『治療を続けてもいいですし、ただ緩和医療をすることもできます』と言うことがあります」と話します。緩和医療とは、患者の苦痛に対処する治療法のことを指しますが、「ただ(just)」という言葉を使うと緩和医療がベストとは言えない最低限の措置かのような印象を与えてしまい、患者の「何でもやってみよう」という気持ちを減退させてしまいます。そのため、このような文脈での「ただ」は禁句とのこと。

また、「~する必要がある(need)」という動詞は、特定の文脈では禁句です。例えば、「気管挿管が必要です」とか「移植が必要です」と言うと、患者や家族はそれ以外の選択肢はないかのように受け止めてしまいます。この場合、「移植が必要です」とは言わずに、「患者の心臓は悪化しています。これが何を意味しているのか、次にどうすべきなのか、お話ししましょう」と言うと、一方的な指示ではなく一緒にオープンな意志決定をすることができます。

例えばがんの場合、「今は気にしないでください」は患者の心配に向き合っておらず、むしろ無視してしまっています。また、「まだステージ2でラッキーでしたね」は、患者によかったという気持ちを持つよう押しつけており、実際にがんを患っていることに対する不安や恐怖に配慮していません。

医師が言ってはならない言葉10選
ベリー氏らは、研究を通じて判明した「医師が使ってはならない言葉」の具体例を10個選び、言い換えの案となるフレーズと根拠を次のようにまとめました。

1.「もう手の施しようがありません」
この言葉の代替案は「今までの治療法はがんのコントロールに有効ではありませんでしたが、症状を改善し、できれば生活の質(QOL)を向上させるような治療に取り組むチャンスがまだあります」です。

2.「良くなることはもうないでしょう」
代替案は「良くならないのではないかと心配しています」で、ベリー氏らはネガティブな予想を断定せず、予後不良に対する懸念に置き換えたほうがいいとしています。

3.「治療の中止」
代替案は「効き目のない今の治療を続けるより、ご本人の痛みを和らげることに重点を移すことができます」です。

4.「余命幾ばくもない」
代わりに「亡くなってしまうのではないかと心配しています」と表現した方がいいと述べています。

5.「私たちに全部やってほしいんですか?」
ベリー氏らは、患者の価値観や目的にそぐわないような誘導的な質問をするのではなく、「状況が悪化した場合の選択肢について話し合いましょう」と言って対話を促すべきだとしています。

6.「すべてうまくいきますよ」
代替案は「このプロセスを通じてあなたをサポートします」で、ベリー氏らは「現実的で思いやりのあるサポートを提供しましょう」と述べています。

7.「ファイト」や「戦い」
日本語でも強い意志で治療に臨むことを闘病と呼ぶことがありますが、このように本人の意気込み次第で病気に打ち勝てるような表現は、治らない場合に患者が自分を責めてしまうことにつながりかねないとのこと。その代わりに、「私たちと一緒にこの難しい病気に立ち向かいましょう」と呼びかけることを、ベリー氏らは推奨しています。

8.「患者はどうすることを望んでいるんでしょうか?」
「望む」という言葉は定義があいまいで、家族には患者が何を望んでいるのかわからないこともあります。ベリー氏らは「もし患者がいまの話をすべて聞いたら、どう思うでしょうか?」と言いながら一緒に考える姿勢を見せることを推奨しています。

9.「どうしてこんなになるまで放っておいたんですか?」
患者を非難し、心配を増やすようなことを言うのは非生産的だとして、ベリー氏らは代わりに「あのときに来院してくれてよかったです」と言うことを推奨しています。

10.「他の先生は一体何をしていたんですか?」「他の先生は一体何を考えていたんですか?」
この言葉の代替案は「セカンド・オピニオンのために受診してくれてよかったです。あなたの記録を見て、次は何をすべきか考えましょう」です。ベリー氏らは、「ひょっとするとまた協力してもらうことになるかもしれない他の医師を中傷するより、今できることに集中して、前向きになるべきです」と述べました。

このような禁句を言ってしまうと会話がストップしてしまい、患者や家族から正直で思慮深い質問や回答を引き出すことができなくなります。そうならないように、臨床医は無意識のうちに恐怖や不快感を与えたり、自主性を低下させたりする言葉を知って、自分のコミュニケーション方法を見つめ直すよう努力しなくてはなりません」と論文に記しました。


元論文のタイトルは、”Never-Words: What Not to Say to Patients With Serious Illness(禁句:重病の患者に決して言ってはいけない言葉)”です(論文をみる)。

もう少し早くこの記事をみておけば良かったと思います。

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