FDAが2011年度に認可した35の革新的な薬物― その2

FDA: 35 Innovative New Drugs Approved in Fiscal Year 2011の続きです。

以下は、記事の抜粋です。


・認可された35の新薬の約半数は、既存薬よりも治療効果を有意に前進させた。心臓発作、脳卒中、腎臓移植における拒否反応などに対する薬物がこの例だ。

・10の新薬は、「オーファン」病とよばれる遺伝性血管浮腫症(HAE)などのように、患者数が少なく治療法もまったく無かった病気の治療のための薬物である。

・約半数の16は、「優先審査(priority review)」とよばれる6ヶ月で審査を終えることを目指したシステムで安全性と効果が認められた。

・新しく認可された薬物の約3分の2は、1回の審査サイクルにより審査が完結した。これは、製薬メーカーから十分なデータが提供されたため、FDAは追加データを要求する必要がなかったためだ。

・3つの新薬は、「迅速認可(accelerated approval)」という、安全で効果的な医学的に重要な新薬の認可を早め、市販認可後に臨床的ベネフィットを確認するシステムによって認可された。この例は、稀な血液凝固疾患治療薬の”Corifact”だ。

・34の薬物はFDAが審査を予定した期間中、あるいは予定よりも早く認可された。これらには6ヶ月未満で認められた3つの抗がん薬も含まれている。


以上のように、記事ではFDAの審査の迅速さが強調されています。批判もあるでしょうが、私は良いシステムだと思います。さて、昨日紹介した抗がん薬以外のものを以下にまとめておきます。

●C型肝炎
1. Victrelis®(boceprevir、メルク)、2. Incivek®(telaprevir、バーテックス)どちらもプロテアーゼ阻害薬です(関連記事その1その2その3その4)。

●全身性エリテマトーデス(systemic lupus erythematosus、Lupus、SLE)
Benlysta® (belimumab、Human Genome SciencesとGlaxoSmithKline):SLEで特徴的な異常Bリンパ球において重要な働きをするBリンパ球刺激因子(B-lymphocyte stimulator、BLyS)を標的としたモノクローナル抗体です(関連記事その1その2)。

●心臓発作と脳卒中
1. Pradaxa®(dabigatran、ベーリンガーインゲルハイム):経口直接トロンビン阻害薬で日本でも承認されました(関連記事その1その2)。
2. Brilinta® (ticagrelor、):クロピドクレル(プラビックス®)と同様にADPのP2Y12受容体への結合を阻害し、血小板の凝集と血栓の形成を抑制します。しかし、プロドラッグでないことや受容体阻害が可逆的であるため、より優れているといわれています(関連記事)。

●MRSA感染
Teflaro®(ceftarolinefosamil、Forest Laboratories)新規セファロスポリン系抗生物質注射剤で、MRSA(メチシリン耐性黄色ブドウ球菌)感染を含む市中肺炎および急性細菌性皮膚感染症・皮膚組織感染症治療薬です。

●腎臓移植
Nulojix®(belatacept、ブリストルマイヤーズスクイブ):腎臓移植を受けた成人の急性拒絶反応の予防。basiliximab、mycophenolatemofetil、など他の免疫抑制剤およびcorticosteroidとの併用下で用いる選択的T細胞共刺激遮断薬です。

● 遺伝性血管浮腫症(HAE)
Firazyr®(icatibant、Shire):10アミノ酸からなるペプチド性ブラジキニンB2受容体拮抗薬で、遺伝性血管浮腫症(HAE)の治療に用いられます。

●遺伝性第XIII因子欠損症(フィブリン安定化因子欠損症)
Corifact®(CSL Behring社):血液凝固第XIII因子製剤そのものです。

●抗サソリ毒素
Anascorp®(Instituto Bioclon):馬で作った抗血清のF(ab)2製剤のようです。

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