がん細胞、光で「爆破」=マウスで治療成功―臨床応用期待・米国立がん研
以下は、記事の抜粋です。
がん細胞に「ナノ・ダイナマイト」と呼ばれる物質を結合させて近赤外光を照射し、がん細胞だけを死滅させる治療法を開発したと、米国立がん研究所の小林久隆主任研究員らの研究チームが11月7日、ネイチャー・メディシン電子版に発表した。
マウスの背に移植した悪性がんで、高い治療効果を確認。周辺の正常な細胞を傷つけないため、理論的には副作用がほとんどないと考えられる。肺や大腸、乳、卵巣、前立腺など多様ながんに対して数年以内の臨床応用を目指しているという。
この治療法は、がん細胞だけに存在するたんぱく質に「抗体」と呼ばれる免疫物質が結び付く性質を利用したもの。
照射する近赤外光の波長は0.7マイクロメートルで、生体組織には無害だが、有機化学物質のナノ・ダイナマイトはこの波長の光を受けると微弱な衝撃波を発生し、近くの細胞膜を破壊する。抗体を利用してがん細胞の表面に送り込み、結合させた上で光を照射すると、がん細胞だけが数秒から数分で死滅する。
元論文のタイトルは、”Cancer cell–selective in vivo near infrared photoimmunotherapy targeting specific membrane molecules”です(論文をみる)。
研究者らは、この手法をphotoimmunotherapy(PIT、光免疫療法)とよんでいます。がん細胞の表面に多く発現しているHER2(乳がん)、EGFR(肺がん、すい臓がん、大腸がん)、PSMA(前立腺がん)などに対するモノクローナル抗体に、 IR700という近赤外蛍光色素を共有結合させたものが、近赤外光依存的にがん細胞を特異的に殺すことを発見したとの報告です。
これまでに、光感受性色素を利用した治療法は他にも開発されていましたが、この色素は親水性であるため、抗体が標的細胞に結合しない限りは毒性を示さないそうです。近赤外光は、数cmの距離であればヒト組織を透過するので、内視鏡などと組み合わせれば、多くのがん治療に利用できるかもしれません。
最近、海外に行く日本人研究者が減ったと言われていますが、本論文の著者6人中4人は日本人のようで、小林さんはNCIの主任研究者です(写真をみる)。私は、海外で活躍する日本人と日本で活躍する外国人が増えるのが良いと考えます。
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