風邪や花粉症など、身近な薬がアルツハイマー病を増やす、飲むほど影響、米国グループ報告
以下は、記事の抜粋です。
ごく身近にドラッグストアーで手に取れるような風邪薬や鼻炎や胃腸の薬に、アルツハイマー病のはじめとした認知症のリスクを高める可能性があるようだ。
ワシントン大学を中心とする研究グループが、JAMA international medicine誌オンライン版で、2015年1月26日に報告した。
問題になるのは、抗コリン作用を持つ薬だ。神経伝達物質の一種である「アセチルコリン」による神経伝達を抑える効果を持った薬だ。総合感冒薬や鼻炎薬、胃腸薬、一部の抗精神病薬、抗うつ薬などが知られている。
研究グループは、抗コリン作用薬を使った蓄積と認知症リスクの関連を明らかにする研究を大規模に行った。研究開始時に認知症がなかった65歳以上の参加者3434人を対象に、2年ごとに状況を調査、平均7.3年間の追跡を行った。
追跡したところ、参加者のうち2割強が認知症を発症。認知症の8割はアルツハイマー病だった。認知症およびアルツハイマー病の発症と、抗コリン作用薬の使用状況の関係を調べたところ、抗コリン作用薬を長期間にわたって多く使用するほど認知症のリスクが増していた。
10年間の期間で、標準的な1日の用量を91日分から365日分使っていると危険度は1.19倍になった。さらに366日から1095日使った場合1.23倍、1096日を超えると1.54倍となっていた。
1年間当たり9日くらい関係した薬を飲むとしたら注意した方がいいだろう。風邪薬のほか、アレルギーで鼻炎の薬を使ったりすると長期に及ぶこともありそうで一般の人でも関係はありそうだ。胃腸の薬も同様だ。長期にわたることの多い、精神関係の病気では注意したいところだ。
元論文のタイトルは、”Cumulative Use of Strong Anticholinergics and Incident Dementia: A Prospective Cohort Study.”です(論文をみる)。
アセチルコリンを分解するコリンエステラーゼを阻害するドネペジル(アリセプト®)が認知症に使われていることや、記事あるように、抗コリン作用薬を使うと、一時的に記憶力が落ちたり、課題処理能力が落ちたりする認知障害が生じると知られていたので、それほど驚くべき報告ではありません。
論文には、三環系抗うつ薬と第1世代抗ヒスタミン薬と過活動膀胱治療のために使用される抗コリン薬(bladder antimuscarinics)が抗コリン作用による認知症リスクの主な原因薬だと書かれていました。
確かに古い世代の抗うつ薬には抗コリン作用が強かったのですが、最近のSSRIやSNRIなどには抗コリン作用がありません。高齢者にはこのような薬物を選べば良いのかもしれません。また、アレルギー性鼻炎の場合、日本では抗コリン作用のあるものや中枢へ移行するような古い薬はほとんどつかわれていないので、問題にはならないと思います。過活動膀胱治療薬として使われる抗コリン薬も日本で使われているものは、中枢移行が低いものが多いのであまり問題にならないと思います。気になるならβ3アゴニストもあります。
あと、COPDに使われるチオトロピウム(スピリーバ®)やグリコピロニウム(シーブリ®)なども中枢移行が低いのでリスクよりもメリットの方が大きいと思います。
また、第1世代の抗ヒスタミン薬は風邪薬(総合感冒薬)によく含まれていますが、これを何年間も飲み続けるヒトは少ないと思います。ということで、少なくとも日本では、「風邪や花粉症の薬がアルツハイマー病を増やす」ことはないと思います。
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