糖尿病網膜症の進行に対するフェノフィブラートの効果

脂質低下薬が糖尿病網膜症の進行を抑制する可能性
以下は、記事の抜粋です。


脂質低下薬のフェノフィブラートが、糖尿病による目の合併症を抑制することを示唆するデータが報告された。網膜症の進行、それによる治療を要するリスクが、プラセボに比べて27%低下するという。オックスフォード大学のDavid Preiss氏らが発表した。

糖尿病網膜症は、高血糖の持続により眼球の奥の血管がダメージを受けることで発症し、血管から血液成分が漏れ出したりすることによって視野が欠けたり視力が低下して、最終的には失明することもある病気。一方、脂質低下薬であるフェノフィブラートは、糖尿病患者の心血管イベント抑制を主要評価項目として検証した複数の臨床試験で、網膜症を抑制するという副次的な効果を有することが示唆されている。

この研究は、英スコットランドの12歳以上の糖尿病患者を対象に実施されている糖尿病眼スクリーニングプログラムのデータを用いて行われた。眼科的治療を要さない初期の糖尿病網膜症、または黄斑症を有する成人糖尿病患者1,151人を無作為に2群に分け、1群をフェノフィブラート群、他の1群をプラセボ群とした。投与量は145mg/日で、腎機能が低下している場合は隔日投与とし、糖尿病網膜症や黄斑症の進行またはそれらの治療(レーザー光凝固、硝子体内注射、硝子体切除術)で構成される複合エンドポイントの発生率を比較した。

中央値4.0年の追跡で、フェノフィブラート群では576人のうち131人(22.7%)、プラセボ群では575人のうち168人(29.2%)にエンドポイントが発生し、前者の方が27%低リスクであることが示された。評価項目を個別に見ると、網膜症または黄斑症が進行した患者数は、フェノフィブラート群が185人(32.1%)、プラセボ群が231人(40.2%)、治療を要した患者数は同順に17人(3.0%)、28人(4.9%)だった。視力や生活の質(QOL)の群間差は非有意だった。

介入期間中の平均推定糸球体濾過率は、フェノフィブラート群の方がプラセボ群より7.9mL/分/1.73m2低値だった。重篤な有害事象は、フェノフィブラート群の208人(36.1%)、プラセボ群の204人(35.5%)で発生した。


元論文のタイトルは、”Effect of Fenofibrate on Progression of Diabetic Retinopathy(糖尿病網膜症の進行に対するフェノフィブラートの効果)”です(論文をみる)。

糖尿病性網膜症の進行を恐れている患者には朗報だと思います。フィブラート系薬剤は、核内受容体のひとつであるペルオキシソーム増殖剤活性化受容体α(PPARα)を活性化します。PPARαは肝臓や脂肪で脂質コントロールに関わる遺伝子を調整します。その結果、脂肪酸を分解する細胞内小器官のペルオキシソームを増やし、血液中の中性脂肪の量を減らすとされています。

ほぼ同じメカニズムの新薬、ペマフィブラート(市販名:パルモディア)は、肝機能検査値の上昇や血清クレアチニン上昇といった従来のフィブラート系薬剤に認められた有害事象が少なく、特に各種スタチンとの併用において相互作用が少ないため高い忍容性が確認されています。さらに、従来のフィブラート系薬剤の多くが腎排泄型であるのに対し、ペマフィブラートは主として胆汁排泄型であり、腎機能低下例でも血中濃度の増加はなかったと報告されています。ということで、糖尿病性網膜症にはこちらの方が良さそうなのですが、効果はどうなんでしょう?

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