「高血圧の基準が変わった」と誤解している患者さん
以下は、記事の抜粋です。
情報リテラシーが低い人は、間違った情報をあまり吟味せずに、そのまま信じてしまいます。
2024年4月から「高血圧の基準が変わった」とする情報を発信している人の元の情報源は高血圧学会のガイドラインではなく、2024年4月から第4期を迎える特定健診の受診勧奨値の記載のようです。受診勧奨判定値への対応が2つに分かれ、血圧が160/100 mmHg以上なら「この健診結果を持って、至急かかりつけの医療機関を受診してください」、140~159/90~99 mmHgなら「生活習慣を改善する努力をした上で、数値が改善しないなら医療機関の受診を」となっています。どうも前者だけを取り上げて「高血圧の基準が変わった」と誤った発信をしているようです。それに対して、日本高血圧学会は「特定健診における受診勧奨判定値についての正しいご理解を」とした声明を出しています。情報を収集する際は、できるだけ信頼できる媒体(学会や公共放送など)、複数の情報を利用するように患者さんに伝えておくとよいでしょう。そして、検索する際には「学会」「公式」などの検索用語を付け加えておくと良いことを説明しておきます。
■患者さんとの会話でロールプレイ
患者:高血圧の基準が4月より変わったそうですね。
医師:えっ、そんな話は初めてですが…どこで聞かれましたか?(情報源を探る)
患者:YouTubeでそう言っていました。上が160を超えたら、病院で治療が必要とか…それなら、私は上の血圧が160を超えていないのでもう薬を飲まなくても良いのでは?
医師:なるほど。…それは、高血圧学会のガイドラインではなくて、健診を受けた人への説明文の変更ですね。誤解されている人が多いんですよ。(誤解している人が多いことを指摘し話す)
患者:えっ、そうなんですか。誤解って、どういうことですか?(興味津々)
医師:確かに4月から健診で上の血圧が160を超えていたら、「すぐに医療機関の受診を」という説明文になりました。
患者:「すぐに医療機関の受診を」ですか…。
医師:そうなんです。それに対して、上の血圧が140~159mmHgなら「生活習慣を改善する努力をした上で、数値が改善しないなら医療機関の受診を」ということになっています。
患者:なるほど。生活習慣を改善して、血圧の値が良くならなかったら、医療機関を受診する必要があるということですね。
医師:その通りです。今、血圧の薬を飲んでいる人が止める基準が決まったわけではありません。ただし、生活習慣を改善すれば、血圧の薬を減らすことはできますよ。
患者:どんなことに気を付けたらいいですか?
医師:基本は減塩ですが、身体を動かすこと(運動)、体重を減らすこと(減量)、お酒を減らすこと(節酒)、そして野菜をたっぷり食べて、果物はこぶし1個分くらいを食べるなどがポイントになります。
患者:なるほど。もう1度、初心に戻って減塩と運動に取り組んでみます。
医師:それはいいですね。応援しています。
患者:頑張って、やってみます。
■医師へのお勧めの言葉
「その情報源はどこですか?」、「検索する際には「学会」とか「公式」とかの用語を入れておくといいですよ!」
以前、私も同じことを聞かれましたが、うまく説明できませんでした。「高血圧の基準が変わった」と信じている血圧160以上のヒトに対してこの説明をした場合、納得して我々が勧める治療を受けるヒトはどのくらいいるのでしょう?
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