適量の飲酒も体に良くない、定説に疑問 研究
以下は、記事の抜粋です。
グラス1、2杯の酒はむしろ心臓によい──酒を飲む人が好んで引用するこの医学的見解だが、BMJ誌にこのほど発表された研究論文によると、この長く信じられてきた考え方には問題がある可能性がでてきた。
研究では、飲酒の習慣と健康についての研究論文50件が調べられた。対象とされたのは26万人以上の欧州系の人々。研究者らが注目したのは、ADH1Bと呼ばれる遺伝子。これまでの研究では、この遺伝子の変異により、アルコールがより早く分解され、依存症リスクが軽減されるとしていた。
今回の研究では、ADH1Bの変異を持つ人は持たない人に比べて1週間あたりのアルコール摂取量が17%少なく、深酒についても78%の確率でしないとの結果が示された。さらに冠状動脈性心臓病リスクは10%低く、血圧の最高値および肥満の可能性も低かった。
論文では、「アルコール摂取量が普段から少ない人でも、それをさらに減らすことで、心臓血管の病にかかるリスクを低減できる」と結論付けている。
元論文のタイトルは、”Association between alcohol and cardiovascular disease: Mendelian randomisation analysis based on individual participant data”です(論文をみる)。
エタノールの90%は肝臓で代謝されます。この代謝は主に1B型アルコールデヒドロゲナーゼ(ADH1B)と2型アルデヒドデヒドロゲナーゼ(ALDH2)によって行われています。エタノールは、まず1B型アルコールデヒドロゲナーゼ(ADH1B)によってアセトアルデヒドに代謝され、次に2型アルデヒドデヒドロゲナーゼによって酢酸に代謝されます。その後、二酸化炭素と水になります。アセトアルデヒドは、顔を紅潮させ、気分を不快にすることが知られています。
本論文で、注目されているのは”rs1229984″(その他、”Arg48His”、”ADH2*2″、”ADH1B*2″など)とよばれるSNP(一塩基多型)です。rs1229984がコードするADH1B酵素では、48番目のアミノ酸であるアルギニンがヒスチジンに変異しています。その結果、酵素活性が野生型の対立遺伝子がコードする酵素と比べて約80倍高くなります。
つまり、rs1229984を持つヒトの方が野生型の対立遺伝子を持つヒトよりもアセトアルデヒドができやすい。というわけで、rs1229984を持つヒトは、お酒を飲むとすぐに赤くなり、たくさん飲んでもあまり良い気分にはならず、アル中にもなりにくいとされています。つまり、rs1229984はお酒をあまり飲まない遺伝型です。
論文によると、rs1229984を持つヒトのアルコール消費量は、野生型のヒトと比べて、1週間のアルコール消費量が17.2%少なく、血圧、血中interleukin-6レベル、ウエスト周囲、BMIもすべて低かったそうです。さらに、冠動脈疾患や虚血性の脳梗塞のリスクも低かったそうです。
ただ、記事でも指摘されているように、rs1229984が飲酒以外の生活習慣にも影響している可能性はあるので、タイトルのような結論は短絡的すぎるかもしれません。
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