高頻度のヘディングは将来の認知障害リスク
以下は、記事の抜粋です。
University of NottinghamのEspahbodi氏らは、サッカーにおけるヘディングの頻度と将来の認知機能障害のリスクとの関連を検討するため、現役を引退した男性元プロサッカー選手を対象に、全国規模の横断研究を実施。その結果、頻繁なヘディングは認知機能障害や認知症の危険因子になる可能性が示唆された。
プロサッカー選手において、反復的な脳への衝撃、特にヘディングによる神経認知機能に対する長期的な影響は以前から懸念されていた。実際に、サッカー選手は神経変性疾患のリスクが高いとされており、これまでの研究では、一般集団と比べ元プロサッカー選手で神経変性疾患による死亡リスクが3倍以上になることが報告されている。
Espahbodi氏らは、ヘディングの頻度が認知機能障害のリスクと関連しているかを検討するため、2020年8月15日〜21年12月31日に後ろ向き横断研究を行った。
対象は、英国のプロサッカー選手会またはリーグクラブ選手会に登録されている、現役を引退した45歳以上の男性元プロサッカー選手468例のうち、郵送された自己申告式の質問票に回答した459例。質問票では、ヘディングの頻度(1試合または1トレーニングにつき0~5回、6~15回、16回以上)、ポジション、現役選手としてのキャリア期間、総出場試合数、現役時代の週平均トレーニング時間、脳震盪の既往の有無など、サッカー特有の危険因子に関するデータを収集した。
主要評価項目は認知機能障害とし、電話による認知機能検査修正版(TICS-m)で21点以下と定義した。その他、ホプキンス言語学習テスト、言語流暢性や手段的日常生活動作(IADL)の評価も実施。自己記入式認知機能検査(TYM)および医師による認知症またはアルツハイマー病の診断については自己申告してもらった。
解析の結果、ヘディングの頻度は、1試合当たり0~5回が114例、6~15回が185例、16回以上が160例、現役中のトレーニングセッション1回当たり0~5回が125例、6~15回が174例、16回以上が160例だった。
認知機能障害の有病率は、ヘディングの頻度が1試合当たり0~5回の群では9.78%、6~15回の群では14.78%、16回以上の群では15.20%だった。
認知機能障害のリスクはヘディングの頻度が1試合当たり0~5回の群と比べ、6~15回の群〔調整オッズ比2.71〕、16回以上の群〔同3.53)と頻度が高くなるほど上昇した。
トレーニングセッション1回当たりのヘディングについても0~5回の群と比べ、6~15回の群(同 2.38)、16回以上の群(同3.40)と頻度が高くなるほどリスクは上昇した。
認知機能障害リスクは、キャリアの長さ、総出場試合数、週平均トレーニング時間との関連はなかったが、記憶喪失を伴う脳震盪の既往で上昇した(同3.16)。
1試合当たりのヘディング数の増加は、TICS-m(23点以下)、IADL(15.5点以下)、TYM(35.5点以下)の低スコア、自己報告による認知症またはアルツハイマー病の診断と関連。また、1トレーニング当たりのヘディング数の増加も、TICS-m、IADL、TYMの低スコア、自己報告による認知症またはアルツハイマー病の診断と関連していた。
今回の結果について、Espahbodi氏らは、「現役を引退した元サッカー選手において、現役中のヘディングの反復が認知機能障害や認知症の危険因子であることが示唆された。リスク軽減に向け、試合やトレーニングセッションごとの安全なヘディング頻度を特定するための研究が必要だ」と述べている。
元論文のタイトルは、”Heading Frequency and Risk of Cognitive Impairment in Retired Male Professional Soccer Players(引退した男性プロサッカー選手におけるヘディングの頻度と認知機能障害のリスク)”です(論文をみる)。
ヘディングが脳にダメージを与えることは、10年以上前から知られており(記事をみる)、米サッカー協会は2015年11月11日、10歳以下の子どものヘディングを禁止し。11~13歳の子どもは練習中のヘディングの回数に制限を設けています(記事をみる)。それでもアメリカはサッカー強国です。
女子高生からサッカーをやっているヒトはやっていないヒトに比べて認知機能が低いという報告もあります(論文をみる)。イギリスのプレミアリーグでも、プロ選手がトレーニングでヘディングする際のガイドラインを設けています(記事をみる)。日本でもガイドラインはあるようですが(記事をみる)、効果があるのかどうかまだわかりません。相撲よりはマシかもしれません。
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