飛翔する昆虫が人工の光に集まる理由

実は未解明問題「虫が光に引き寄せられる理由」がついに判明!
以下は、記事の抜粋です。


英国のインペリアル・カレッジ・ロンドン(ICL)で行われた研究により、虫が光の周りに集まる仕組みが提唱されました。研究者たちは素早い虫の動きに追随するためのハイスピードカメラとトラッキングソフトウェアを用意し、人工光源に接近した虫たちに何が起こるかを調べてみました。

すると3つの意外な事実が明らかになりました。

下から光が照らされると虫の上下がひっくり返りそのまま失速&墜落
動画のように、下からの光に照らされると飛行中の虫の背腹がひっくり返った状態になり、光源に背を向けるような状態になって失速し、墜落していきました。

上から光が照らされると急上昇を起こす
また虫が光源の下を通過した場合には、光源に背を向けながら急上昇を起こしました。急上昇している様子が人間には光に向かっているように見えてしまいます。

横から光が照らされるとライトの周りをグルグル回る
さらに光が虫の横側からあてられた場合には、光源の周りをグルグル周るような動きをみせました。このとき虫たちはしばしば光源に対して背中側を向けるような飛びかたをしました。

3つの結果はどれも虫たちが光源に対して背中を向けようとする過程で引き起こされ、結果的に光源への引き付けにつながっていました。

ここで研究者たちが注目したのが「背光反射」と呼ばれる虫たちの性質でした。背光反射は虫や魚によくみられる姿勢制御機能であり、明るい方向に背中側を向けようとする反射的な行動になります。比較的大きな動物にとって上下感覚は重力を感知することで認識されます。しかし小さな虫や魚にとっては空気や水の粘度が無視できない問題であり、適切な重力を感知することを阻む要因になりがちです。そのため小さな虫や魚には重力と反対の方向(上)を光の明るさによって感知し、明るい方向に自動的に背中を向ける姿勢制御システムが存在します。

研究者たちは光源への接近が虫たちの背光反射を引き起こして光源への急上昇や墜落を引き起こしている様子が人間にとって「見かけ上」光源に突撃しているように見えている可能性があると結論しました。そこで次に研究者たちは実際の虫と同じように光源に近づくと「背光反射」を起こすようにプログラムされた架空の虫をシミュレーション空間に設置し、行動パターンを調べました。すると「光源に接近すると背中を向ける」という簡単な機能しか持たない虫たちにも実際の虫と同じように光源への急上昇や墜落、周回を引き起こすことが判明。

以上の結果は、虫たちに備わった背光反射という世界の上下を認識する単純な仕組みが人工光源によって乱されたことが、虫たちを光の周辺に拘束し続ける原因であるとを示唆します。

背光反射は古くから知られていた反応でしたが、光が昆虫をとらえる原因であると提案されたのは今回の研究が世界ではじめてとなります。


元論文のタイトルは、”Why flying insects gather at artificial light(飛翔する昆虫が人工の光に集まる理由)”です(論文をみる)。

光に背を向けて飛ぶとすると、初めは上にあった人工の光もそのうち下に来るので、電球が上にある場合でも、時間が経過すれば光に背を向けて縦にグルグル回ることになるのかなと思いました。

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