心房細動アブレーション…線維組織に対する追加焼灼には有意な効果は認められなかった

線維組織に対する追加焼灼 - 心房細動アブレーションはさらに進化したか?
進化したと思っていましたが、そうではなかったようです。以下は、記事の抜粋です。


(1)加齢と線維化と心房細動
心房細動は心筋組織の「線維化」にその根本原因があるとされている。実はどこの臓器でも加齢と線維化の進行は表裏一体であり、心臓の場合、その典型的な表現型が心房細動であるという言い方もできる。

・線維化が進んだ心房では、洞房結節からの信号が線維組織に邪魔されたり、ほかの場所からの信号が混ざったりして、その結果小さな不規則なリエントリー回路が形成される。

・加えて、線維化が進んだ心臓は急速に大きくなっていき(リモデリング)、余計に伝導が房室結節に伝わりにくくなり、さらに心房細動が起きやすくなる。

(2)線維組織をターゲットとするアブレーションは有効か?
近年、この線維組織は、MRIによって可視化することができる。今回のDECAAF II試験では、心房細動カテーテルアブレーション(焼灼)治療を行う際に、追加でこの線維組織を「焼く」ことによって、治療成績を向上させることができるかどうか、ランダム化によって検討している。

しかし、結果から先に申し上げると、線維組織を追加焼灼した群と通常焼灼群を比較しても、90日の心房細動の再発率に差は認められず(43.0% vs.46.1%、P=0.63)、一方で手技関連の合併症(とくに脳梗塞)は増えてしまった(1.5% vs.0%)。同論文の著者たちは結語に率直に「この研究結果は MRIガイド下のカテーテル焼灼術の使用を支持しない(findings do not support the use of MRI-guided fibrosis ablation)」と記している。

(3)DECAAF II試験がもたらしたもの
意欲的なデザインであり、線維組織を焼灼のターゲットとするということも非常に理に適っていたように考えられたのだが、予想されるような結果はもたらされなかった。しかし、自分はこのDECAAF II試験が実施されたことには大きな意義があったと考えている。「線維組織周辺を焼いたほうがよいような気がする」という、理には適っているが仮説にすぎない命題を、多施設共同RCTに落とし込み、検証を行う姿勢というのは見習うべきではないかと思う。最終的に10ヵ国44施設から843例の患者さんを登録したと記載されているが、こうした方々の協力があってこそ、いわゆる標準治療は真に「標準(スタンダード)」であると広く認知されるのではないだろうか。


「〇〇〇〇〇—〇〇」ほうがよいような気がする」という、理には適っているが仮説にすぎない命題を、多施設共同RCTに落とし込み、検証を行う姿勢というのは本当に見習うべきだと思います。世の中には、理に適わないことでも強引に主張して他人にも吹聴するようなヒトが多いことがコロナで良くわかりました。

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