骨転移患者の骨が弱くなるのを防ぐ骨病変治療薬ランマーク(デノスマブ)による低Ca血症について

第一三共ランマークで「安全性速報」 低Ca血症で死亡も 添付文書に「警告」欄
以下は、記事の抜粋です。


厚生労働省医薬食品局は9月11日、がんの骨転移患者の骨が弱くなるのを防ぐ骨病変治療薬ランマーク(デノスマブ)の副作用の低Ca血症について、7月の注意喚起以降、死亡例も報告されたとして、製造販売元の第一三共に対し、添付文書には「警告」欄を設けるとともに、「安全性速報」(ブルーレター)により医療現場への注意喚起を徹底するよう指示した。

同省によると、4月の発売から推定で約7300人が使用した。7月の注意喚起時点で国に報告された低Ca血症は6人だったが、その後の約4ヶ月間に重篤なケースが32人、うち男性2人が死亡したことが分かった。

具体的な注意としては、▽投与前及び投与後頻回に血清Caを測定をすること。▽Ca及びビタミンDの経口補充をすること。▽重度の腎機能障害患者では低Ca血症を起こすおそれが高いため、慎重に投与。・・・などを医療機関に伝えることを求めた。

投与中の患者で、低Ca血症の初期症状である手足のふるえ、しびれなどの症状がある場合には直ちに医師に連絡するよう呼びかける。


ランマーク®(デノスマブ、denosumab)は、Amgenが開発したRANKLを標的とした抗体医薬です。RANKL(receptor activator of NF-κB ligand)は、TNFリガンドファミリーに属する膜結合型サイトカインで、骨芽細胞などが発現するタンパク質です。RANKL の受容体(RANK: NF-κB活性化受容体)は、破骨細胞前駆細胞上に存在しており、骨芽細胞と破骨細胞前駆細胞がコンタクトすることにより、RANKLとRANKが結合し、TRAF6(TNF receptorassociated factor6)を介する情報伝達経路が活性化された結果、前駆細胞が破骨細胞へと分化します。

デノスマブは、RANKLに結合する完全ヒトモノクローナル抗体で、RANK/RANKLの結合を阻害して、破骨細胞への分化を抑制することで、破骨細胞数を減少させます。閉経後骨粗鬆症や骨転移を伴う悪性腫瘍に対する効果が期待されています。

破骨細胞は、コラゲナーゼや水素イオンその他の酵素を放出し骨基質を溶かすことで、血中Ca濃度を上昇させます。つまり、低Ca血症はデノスマブにより破骨細胞が減少した結果であり、主作用が過剰になって生じる副作用です。

ビスホスホネート(BP)剤は、破骨細胞そのものに作用してその機能を抑制するので、デノスマブと同様に低Ca血症を引き起こします。どちらの薬物を用いる場合も、記事に書かれているような注意を徹底する必要があると思います。

関連記事
前立腺がん骨転移治療でのDenosumab(抗RANKLヒトモノクロ抗体)とゾレドロン酸の比較
腫瘍に浸潤するT細胞は、RANKL–RANKシグナル伝達を介して乳がんの転移を促進する
Denosumab(抗RANKL完全ヒトモノクローナル抗体)が欧米で骨粗鬆症の治療薬として承認。
骨粗鬆症の治療薬、ビスホスホネート剤が乳がんリスクも減らす!?
ビスホスホネート(骨粗鬆症治療薬)の作用メカニズムについて

コメント

タイトルとURLをコピーしました