近畿大学がチョウザメをメス化する実験に成功 大豆イソフラボンのエサで安全かつ効率的なキャビア生産へ
以下は、記事の抜粋です。
日本で初めて、大豆イソフラボンによるチョウザメの全メス化に成功しました。近畿大学水産研究所 新宮実験場の発表によれば、大豆イソフラボンを含んだエサを与えるだけで、すべてのチョウザメがメス化したという。この方法が実用化されれば、チョウザメ養殖の課題である、キャビアの生産効率の向上につながります。
今回の研究で用いたのは、東ヨーロッパ〜ロシア海域に広く分布する小型の「コチョウザメ(Acipenser ruthenus)」です。本種はチョウザメ科の中で最も成長が早く、メスの体重が1キロに達する3才ころには、キャビアとなる卵を持つようになります。
一方で、チョウザメは、オスとメスが1:1の割合でしか生まれないため、養殖におけるキャビアの生産効率が低いことで知られます。そこで研究チームは、メスを多く得るための技術開発を目指して、2021年5月から、大豆イソフラボンを用いたメス化実験を行ってきました。大豆イソフラボンは、生物の体内で女性ホルモンと同様の作用を持つことで有名です。
実はチームはすでに、同様の実験をナマズで成功させています。今回は、孵化後2カ月のコチョウザメの稚魚を5グループに分け、グループ1〜3には、大豆イソフラボンの一種である「ゲニステイン」を含む飼料を180日間与え続けました。
その際、ゲニステイン含有量は、グループ1で10µg/g、グループ2で100µg/g、グループ3で1000µg/gに設定しています。そして、グループ4には女性ホルモン(10µg/g)を含んだ飼料を、グループ5には、いずれも含まない普通の飼料を与えました。
また、グループ1〜4は180日間の期間が終わると、普通の飼料に戻して70日間飼育し、グループ5は普通の飼料を250日間継続して与えます。
その結果、卵巣を持つ個体の割合は、グループ3で、8尾中8尾(100%)でした。また、遺伝的にはオスだが卵巣を持つ個体の割合は、同じグループ3でのみ、5尾中5尾(100%)となっています。これは、ゲニステイン含有量を1000µg/gに設定することで、コチョウザメが全メス化することを意味します。
本研究の成果により、チョウザメ養殖におけるメスの割合を増やすことで、キャビア生産効率の向上が期待できます。
「日本で初めて」という言葉で「世界で初めて」ではないのかな?と思いました。
この実験では魚のエサに市販のゲニステインを混ぜて与えているようですが、養殖事業でこれを行うことは違法なので、ゲニステインを1mg/g含むエサをどのように安価に用意するかも問題です。ちなみに、資料によると北海道産の大豆に含まれるゲニステインの量は100μg/g以下です。近大が発表した下の表では、100μg/gではまったく効果がありません。
苦労してすべてのオスをメス化しても、卵巣を持った魚が倍になるだけですので、どれほど経済効果が上がるのかも疑問です。ナマズのかば焼きはどうなったのでしょうか?
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