アルツハイマー病防ぐ遺伝子変異発見、認知機能維持にも

アルツハイマー病防ぐ遺伝子変異発見、認知機能維持にも

以下は、記事の抜粋です。


欧米の研究チームがNature誌に、アルツハイマー病を防ぐ働きがあると考えられる遺伝子変異を発見したと発表した。欧米では60歳以上の人の5%以上が認知症を患っているとされ、そのうち3分の2がアルツハイマー病によるものだという。

研究チームが発見した遺伝子の変異は「A673T」と呼ばれ、アルツハイマー病に限らず高齢による認知機能低下も予防するという。

論文の主著者で、アイスランドのdeCODE社のCEO、Kari Stefansson氏は、「これは、アルツハイマーに関連するタンパク質を作ると長年考えられてきた遺伝子内の変異で、生成されるタンパク質の有害性は少ない。この珍しい変異を持つ人は、アルツハイマー病を発症する可能性が通常の5~7分の1となっている」と述べた。

また同研究チームはアイスランド人約1800人の遺伝子データの調査から、アルツハイマー病を患っていない80~100歳の人でこの変異を持っている人は、持っていない人に比べて認知機能がかなり高いことも突き止めた。

Stefansson氏によれば、記憶障害と認知症を主症状とする進行性かつ不治のアルツハイマー病の特徴のひとつは、脳内に老人斑と呼ばれるタンパクが沈着することで、治療法の研究では過去20年間、アミロイド前駆体タンパク(APP)を操作する研究が多数試みられてきた。論文要旨では「発見された変異はおそらくアルツハイマー病の予防治療におけるターゲットを示すものだ」と述べられている。


元記事のタイトルは、”A mutation in APP protects against Alzheimer’s disease and age-related cognitive decline”です(論文をみる)。タイトルにあるように、この変異はAPP(amyloid-β precursor protein、アミロイドβ前駆体タンパク質)をコードする遺伝子の中にあります。

APPのA673T変異(673番目のアラニンがスレオニンに変異)を持つヒトは、アルツハイマー病になりにくく、アルツハイマー病に罹患しない場合でも、高齢化による認知機能の低下を来たしにくいということです。

APPの673番目のアラニンは、aspartyl protease (触媒活性中心がアスパラギン酸であるペプチド加水分解酵素)で切断されるβ部位に隣接しており、この変異があると試験管内でのアミロイド生成性ペプチドの形成が約40%減少するそうです。

これらの結果は、β部位での切断を減らすことがアルツハイマー病を防ぐという仮説を支持しています。また、すくなくとも一部のアルツハイマー病と高齢による認知低下はメカニズムを共有する可能性があることも示唆しています。

アルツハイマー予防薬として、APPのβ部位を切断するspartyl protease (BACE1)の阻害薬が登場するかもしれません。

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