死因・第2位の心不全…医師が即受診を勧める「何気ない症状」
以下は、記事の抜粋です。
日本の死因・第2位の「心不全」潜在患者は多いが…
「心不全」の患者数は2020年には全国で120万人にのぼり、高齢化に伴って、今後も増加の一途をたどると推定されています。日本における死因別死亡総数の順位では、心疾患による死亡は悪性新生物(癌)に次いで2番目に多く、心不全による死亡は心疾患のなかで最も多くの割合を占めています。
心不全の原因疾患は多岐にわたり、心筋梗塞や心筋症のように心筋組織が直接障害を受けて心不全を発症する場合や、弁膜症や高血圧などにより、心筋組織に長期的に負荷が加わえられた結果、機能障害が起きて心不全を発症する場合、頻脈性ないし徐脈性不整脈により血行動態の悪化が生じる場合などがあります。
日本において心不全の原因疾患で多いのは、順に虚血性心疾患、高血圧、弁膜症というデータがあります。そのうちの一つである弁膜症は年齢とともに罹患率が増加しており、日本の総人口において、65~74歳で約148万人、75歳以上で約245万人の潜在患者がいると推測されます。そこで本記事では弁膜症の一つである「大動脈弁狭窄症」について紹介していきます。
「大動脈弁の硬化」でゆくゆく起こる怖い事態
「大動脈弁」とは心臓の左心室と大動脈の間にある弁のことを指します。この大動脈弁が何らかの原因で硬くなり、開きが悪くなると、心臓に徐々に負担がかかります。
この状態が長年続き、次第に弁口面積が狭くなることで心臓にかかる負担が増加し、心不全を発症します。大動脈弁の経時的な変化をみてみると、当初こそ弁狭窄を伴わない大動脈弁硬化の状態が、無症状の内に次第に進行し、大動脈弁の肥厚、線維化、石灰化が生じて大動脈弁狭窄症に至ります。加齢と共に狭窄の程度が増悪してくるのです。
狭窄が高度になるにつれ、息切れ、胸の痛み、動悸、足のむくみ、体がだるい・疲れやすい、気を失うなどの症状が出現します。これらの症状が出現した重症大動脈弁狭窄症の患者の平均余命は、狭心痛出現後が45ヵ月、失神後が27ヵ月、心不全後が11ヵ月という報告があり、有症状の重症大動脈弁狭窄症患者の予後はよくないことがわかっています。
また、無症状であっても弁狭窄の程度が特に強い患者や短期間で進行している患者、心機能障害が強い患者などでは突然死や入院を要する心不全に至る可能性が高く、速やかな治療が必要となります。
「しんどいな」と思ったら早めに受診してほしい
症状の出始めを見逃さないことが重要です。「ちょっとしんどいな」と思ったら早めに医師にご相談ください。また、聴診もしくは健康診断で心雑音が指摘されたら、循環器専門の医師に心エコー図検査をしてもらうようにしましょう。
狭窄が起きていると診断された場合、自然には元に戻ることはなく進行していく病気であることをまずは認識する必要があります。その上で、定期的な診察と心エコー図検査を行って、自覚症状と重症度の変化を正確に評価し、治療のタイミングを逃さないことが重要です。
ザ・ローリング・ストーンズのボーカル、ミック・ジャガーさんは、2019年に75歳で、大動脈弁狭窄症の治療のために大動脈弁置換術を受けたと報じられました(記事をみる)。胸開を伴う大手術ではなく、カテーテルを通じた低侵襲の「経カテーテル大動脈弁植え込み術( transcatheter aortic valve replacement、TAVR)」とよばれる手術だったそうです。私もこの報道で大動脈弁狭窄症がポピュラーな病気であることを知りました。
1位の虚血性心疾患、2位の高血圧に次ぐ心不全の原因とされていますが、発見されにくい病気ですので、今後はこの順位が上がってくる可能性があると思いました。
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