ハーバード大の研究グループ、日本のHPVワクチンの接種率低下を分析 6つの提言を公表
以下は、その6つの提言です。
1.厚生労働省は子宮頸がんを専門とする産婦人科医を副反応検討部会の委員として招き、子宮頸がんのリスクを正しく評価できる体制を作る必要がある。また、参考人として疫学研究者を招き、積極的勧奨中止の影響を数値で評価することを提案する。
2.地方自治体は、HPVワクチンの存在を知らずに接種機会を逃す女性をなくすため、接種対象者に個別通知を送付する。
3.学会は引き続き厚労省に積極的勧奨の再開を働きかける必要がある。関連学会の見解をまとめた要望書を提出することを提案する。関連学会はHPVワクチン接種に関わる全ての医療従事者を教育し、医療従事者は積極的に接種対象者へ教育することが望まれる。
4.政治家は、幅広く市民の意見と専門家の助言を踏まえた上で政策立案を行う必要がある。積極的に政府への働きかけを行うことが肝要。
5.市民社会は、HPVワクチン問題がより広く認知されるよう、重要な役割を果たすことができる。例えば、子宮頸がん患者自身が経験を共有することやHPVワクチンの接種体験を共有することは接種対象者の理解を得るのに有効。
6.マスメディアは、科学的根拠に基づきバランスの取れた報道を行い、国民が科学的研究を理解できるよう助ける役割がある。公衆衛生の専門家と協力して病気のリスクと接種のリスクをわかりやすく伝え、接種対象者の意思決定を助けることが必要。
その上で、「全ての利害関係者は、この問題に対処するために多様で協調的な行動を取る必要がある」と協力して行動を起こすよう提案。
「互いに影響を及ぼし、ワクチンに対する一般の認識を変え、国の積極的な勧奨を再開させ、日本のHPVワクチンへのためらいを解決するのに助けになる」と促し、「利害関係者間の協力は、HPVワクチンについての理解を深め、社会的信頼を高め、それによって女性と日本全体の公衆衛生を改善するために重要だ」と結んでいる。
元論文のタイトルは、”Access to HPV vaccination in Japan: Increasing social trust to regain vaccine confidence(日本のHPVワクチン接種へのアクセス:ワクチンへの信頼を回復するために社会的信頼を向上すること)”です(論文をみる)。
以下の図のように、日本では、8年3ヶ月もの間、HPVワクチンがほとんどうたれない状態が放置されてきました。おそらく今後10年ぐらいの間、日本は「子宮頸がんがまだ残っている国」として世界の医療関係者から奇異の目で見られることになると思います。田村厚労相は、10月から積極的勧奨の再開を審議する副反応検討部会を開くとしているそうですが、総裁選挙や大臣交代などがあると忘れられてしまいそうで心配です。
また、上の記事で下線を引きましたが、日本では朝日新聞などのマスメディアの科学的根拠を無視したウケ狙いのセンセーショナリズムが政府の腰を引かせた最大の理由だと思います。
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