新型コロナ感染者を見つけ出すために、施設入り口の検温は有効なのか?

新型コロナ感染者を見つけ出すために、施設入り口の検温は有効なのか?
以下は、記事の抜粋です。


新型コロナの流行開始後、病院などの施設の入り口でサーマルカメラなどを設置して、入場者の検温を行っている施設が増えました。ところでこの検温って、どれくらい有効なのか考えたことはありますでしょうか?

そうです、全く意味がないとは言いませんが、新型コロナ感染者を見つけるという目的のためには決して効率の良い方法とは言えません。以下にその理由を述べます。

現在多くの施設で行われている検温は顔面などの表面温度が測定されていますが、これは被験者からセンサーまでの距離や気温、湿度などの環境要因に影響を受けると言われています。非接触性の体温計は、電子温度計と比べて1〜2度の差が生じるという報告もあり、入り口の検温で測定された体温と、実際の体温(例えば腋窩温)とは乖離がある可能性があります。

新型コロナを発症した人のうち発熱がある人は半分以下
新型コロナというと「発熱」「咳」という症状をイメージする方が多いと思いますが、実際にこれらの症状(「38度以上または自覚症状」を呈する方はそれぞれ半分以下とされています。つまり、新型コロナ患者の半分以上は熱がないので、検温をすり抜けてしまうことになります。また、新型コロナに感染しても全く症状のない「無症候性感染者」の方も、年代ごとに割合は異なりますが、一定の割合でいらっしゃいます。感染者全体のうち、概ね3-4割が無症候性感染者と考えられています。

では検温はどれくらいの効率で新型コロナ患者を見つけることができるのでしょうか。スイスで行われた研究では、新型コロナ患者84人と健康な人の体温測定を行い比較をしたところ、新型コロナ患者と健康な人との体温は大部分が重複していることが分かりました。38度以上の人を検温で引っ掛けるようにすると、確かに健康な人は除外されて新型コロナ患者だけを引っ掛けることができましたが、38度未満の新型コロナ患者(全体の83%)を見逃す、という結果でした。逆に、基準値を下げすぎると新型コロナではない人までたくさん締め出されてしまうことになります。

また38度以上の発熱が続いた日数について見てみると、83%が0日、11%が1日、4%が2日、3日以上続いたのは全体の2%でした。つまり、特に若い軽症の感染者では、発熱のある期間は短いため、それ以外の時期に検温をしても引っ掛けることはできませんので、実際には検温で引っ掛けることができる新型コロナ感染者はもっと少ないと考えられます。

少なくとも発熱者として引っ掛かった人の中に新型コロナの人が紛れている可能性はありますので、一概に意味がないとは言えないですが、この検温によって新型コロナの対策として十分と考えることはできません。検温をすり抜けて施設内に入る新型コロナ感染者がたくさんいるであろうことを想定した上で、対策の一つに過ぎないと割り切って用いるべきと考えられます。ちなみに、熱があることを自覚されている場合は、無理をせず休むようにしましょう。


検温をしている球場や劇場などで、「お客様の安心・安全のために検温を実施しています」などと良く書かれていますが、こういう表示があると客は、「検温をして入場すれば安全で安心しても良い」と思わせるので是非ともやめて欲しいと思います。

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