心房細動の薬物治療と非薬物治療

先日、「心房細動の薬物治療と非薬物治療」と題する勉強会に参加してきました。講師のY先生のお話はとてもわかり易く、「目から鱗」の連続でした。後の「討論会」で彼がクラブの後輩で、ジャズをやっていたことがわかりました。Y先生のご専門は、非薬物治療のアブレーションのようでしたが、勉強会のスポンサーがバイエルでしたので、現在発売準備中のリバーロキサバン(イグザレルト®)を中心とした新しい抗凝固薬のことも多く話されました。以下にまとめておきます。

リズムコントロールとレートコントロール:心房細動(AF)の薬物治療にはリズムコントロールとレートコントロールがある。リズムコントロールとは、AFを停止させてリズムそのものをコントロールする治療法で、主に抗不整脈薬を使用する。レートコントロールとはAF発作が起こったまま心拍数をコントロールし、速くなりすぎないようにする治療法で、ジキタリス、ベラパミル、ジゴキシン、β遮断薬等が使用される。欧米で行われた大規模試験の結果、レートコントロール群よりも、リズムコントロール群の方が生命予後が悪い傾向が認められた。従って、AFの治療方針としては、まず心拍数コントロール法を推奨し、抗不整脈薬による洞調律維持は、生命予後改善ではなくQOLの維持を目的とする。

CHA2DS2-VAScスコアを用いた抗凝固療法:血栓塞栓症はAFの最も重篤な合併症である。これを予防する目的で抗凝固療法を行なう。AF患者の脳梗塞発症リスクを数値化し、抗凝固療法を行なうためのツールとして、CHADS2スコアが使用されていたが、低リスク症例においては、抗凝固療法による効果と脳出血リスクとの間で判断に苦しむ場合が多かった。これを改善するために、ヨーロッパでは、下図のCHA2DS2-VAScが導入された。総計9点中2点以上で抗凝固療法を行ない、1点でも抗凝固薬またはアスピリンの投与を考慮することを推奨している。

ダビガトランやリバーロキサバンなどの薬物では、抗凝固モニターの意味が無い:これらの薬物の効果の発現はワルファリンと異なり速い。どちらの薬物も血中半減期は、5-13時間であり、服用直前と直後の凝固能を活性化部分トロンボプラスチン時間(APTT)などで比較するとまったく異なる。1日1回服用のリバーロキサンでは、服用直前の凝固能はほとんど正常である!おそらく、一日中持続して凝固能を抑制する必要はないのだろう。ダビガトランは腎排泄型なので、腎不全のある患者では使いにくいが、リバーロキサバンは肝臓排泄型なので、腎機能がある程度悪くても使える。また、ダビガトランには消化管出血が多く、リバーロキサバンには鼻出血と歯肉出血が多い。

Y先生の不整脈センターでは年間200例以上のアブレーションを行なっているそうです。心房細動の発生源である肺静脈を電気的に隔離するのが基本です。長期の生命予後はまだわからないですが、発作性AFの治癒率は薬物治療の約2割に比べて、アブレーションは8割と圧倒的に優位だそうです。Y先生は、発作性AFが時間とともに持続性・慢性に移行するので、早期のアブレーションを推奨しておられました。

日経メディカルオンラインより

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参考記事
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CHA2DS2-VAScスコア

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