以下は、記事の抜粋です。
アルツハイマー病は脳の部位から部位へ伝染病のように拡散するという研究結果が2月1日、米科学誌「プロスワン」に発表された。
米Columbia University Medical Centerの研究チームは、遺伝子組み換えマウスを使った研究で、アルツハイマー病に関連する異常なタウタンパク質がニューロンからニューロンへ「ジャンプ」しながら、脳回路を移動していることを確認したという。
今回の発見を応用すれば、いつの日かアルツハイマー病の進行を遅らせたり止めたりする治療法が確立されるかもしれない。論文著者のScott Small同大教授は、「アルツハイマー病の最も効果的な治療法は、がんと同様かもしれない。つまり早期発見、早期治療によって拡散のチャンスを与えないことだ」と述べた。
アルツハイマー病はニューロン内でのプラークの蓄積と、繊維化した異常タウタンパク質のねじれが特徴で、これまでの研究でも症状がまず記憶に重要な役割を果たす内嗅皮質内で始まり、他の部位に拡散していくことが示されている。
元論文のタイトルは、”Trans-Synaptic Spread of Tau Pathology In Vivo”です(論文をみる)。
アルツハイマー病(AD)は神経病理学的には、アミロイドβ蛋白(Aβ:βアミロイド)により構成される老人班と、凝集し、繊維化し、異常リン酸化された微小管結合タンパク質タウにより構成される神経原線維変化の2つが特徴です。
最も初期に認められるADの変化は、異常なタウが内嗅皮質(entorhinal cortex、EC)に蓄積することです。その後、海馬、さらには新皮質領域へと異常タウの蓄積が拡大することが知られています。ECとシナプスを介してつながっている海馬や新皮質におこる病変が、ECから何らかの形で伝播するのか、あるいはECとは独立して無関係に発生するのかは不明でした。
研究者らは、異常なヒトのタウをECに限局して発現するトランスジェニック・マウスを用いて、ヒト型タウの加齢による分布変化を観察した結果、シナプスを介して異常なタウがECから他の領域へ伝播することを示しました。
おもしろいのは、New York Timesの記事に、同じ研究がハーバードでも行なわれていて、Bradley T. Hymanらのグループの論文がNeuron誌に掲載予定であると書かれていることです(記事をみる)。通常は、”embargo”とよばれるルールがあって、論文が発表されるまでマスコミにはニュースは流すことはできません。今回はそれが簡単に破られています。
Cell press、ハーバード、New York Timesのいずれかが「embargo破り」を積極的に進めたと思われます。プロスワンもなかなかやるやんか!
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