以下は、記事の抜粋です。
スウェーデンのカロリンスカ研究所は10月3日、2011年のノーベル医学・生理学賞を、免疫の仕組みの解明に貢献した米スクリプス研究所のブルース・ビュートラー教授(53)、フランス・ストラスブール大のジュール・ホフマン教授(70)、カナダ生まれで米ロックフェラー大のラルフ・スタインマン教授(68)の計3人に授与すると発表した。
ビュートラー、ホフマン両教授は、体内に侵入してきた細菌やウイルスなどを察知し、免疫機能を働かせるきっかけとなるたんぱく質「Toll様受容体」(TLR)を発見。スタインマン教授は、取り込んだ抗原を免疫系の細胞に教える「樹状細胞」を発見した。
ビュートラー、ホフマン両教授は2004年、TLR研究の第一人者として知られる大阪大の審良静男教授(58)とともにロベルト・コッホ賞を受賞。ホフマン教授は今年のガードナー国際賞も、審良教授と共同受賞している。
ご存知と思いますが、ノーベル賞のサイトはここです。ぜひ、一度覘いてみてください(サイトをみる)。
このあたりの業界の知識がほとんど無い私は、新聞や雑誌の情報を元に、自然免疫といえば審良氏が受賞するものだと思っていたので、このニュースをみて驚きました。そこで、受賞理由の論文を調べてみました。
Beutlerグループの論文は、”Defective LPS signaling in C3H/HeJ and C57BL/10ScCr mice: mutations in Tlr4 gene.” Science. 1998 Dec 11;282(5396):2085-8.です(論文をみる)。一方、審良グループの論文は、”Toll-like receptor 4 (TLR4)-deficient mice are hyporesponsive to lipopolysaccharide: evidence for TLR4 as the Lps gene product.”J Immunol. 1999 Apr 1;162(7):3749-52.です(論文をみる)。
審良グループの論文の最後に、”During preparation of our manuscript, a similar finding was published through the analyses of genetic and physical mapping of the Lps locus.”と書かれて、Beutlerグループの論文が引用されています。確かに結論は”similar”ですが、方法論はforward geneticsとreversed geneticsで全く違います。私はforward愛好者です。
TLR受容体に関連する論文のインパクト・ファクター合計や引用数の合計では審良グループが圧倒しています。しかし、ノーベル賞の基準から考えると、Beutler氏という選択が順当だと思われます。
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