ヨーグルト関連の話題を2つ紹介します。
「ビフィズス菌で長生き」確認 京都大など、マウスで
以下は、記事の抜粋です。
京都大や協同乳業などのグループは8月17日、ビフィズス菌「LKM512」をマウスに与えると、与えないマウスよりも寿命が延びたとする研究成果を発表した。
研究では、マウスに市販のヨーグルト約150mlに含まれる量の菌を水に溶かして週3回投与。人の年齢で約70歳の時の生存率は菌を与えたマウスが約80%、生理食塩水を与えたマウスが約30%となり、大きな差が出た。菌を与えたマウスは毛並みも良くなるという。菌を与えると、大腸内でポリアミンという成分が増えて、大腸の老化抑制、抗炎症の促進などの効果があった。
元論文のタイトルは、”Longevity in Mice Is Promoted by Probiotic-Induced Suppression of Colonic Senescence Dependent on Upregulation of Gut Bacterial Polyamine Production”です(論文をみる)。
記事には、ビフィズス菌を大量投与すると寿命が延びるという現象がいかにもポリアミンで説明できるように書かれていますが、ポリアミンを投与しても寿命が延びることを示していない(効果がない)ので、長生き効果がポリアミンを介するというのは、あくまでも推測に過ぎません。
乳酸菌の整腸物質解明 サッポロビールと旭医大
以下は、記事の抜粋です。
整腸効果がある乳酸菌について、乳酸菌から分泌されるリン酸の一種「ポリリン酸」が腸に働き、保護する役割があることを、サッポロビールと旭川医大のグループが解明した。整腸をもたらす物質とメカニズムが特定されたことで、腸疾患への対応やポリリン酸を抽出した医薬品など幅広い活用が期待される。
研究グループによると、乳酸菌中の整腸効果がある物質を特定したのは世界初。グループは、大麦を使って培養した乳酸菌をマウスに投与。乳酸菌から出たポリリン酸が、腸の上皮細胞にあるタンパク質の「インテグリン」を介し、細胞同士の隙間を狭める信号を伝えることで、有害物質や病原菌の侵入を防ぐことを突き止めた。マウスによる実験では、腸管の障害や出血予防に効果があることも分かった。
元論文のタイトルは、”Probiotic-Derived Polyphosphate Enhances the Epithelial Barrier Function and Maintains Intestinal Homeostasis through Integrin–p38 MAPK Pathway”です(論文をみる)。
こちらの論文ではポリリン酸投与の効果を確認しています。どちらの論文でも腸管上皮のバリア機能が向上することを示しているのですが、上の論文ではLKM512菌の効果をみているだけなのに対して、こちらの論文ではポリリン酸の投与でバリア機能が向上し、それがp38マップキナーゼ阻害薬で拮抗されることも示しています。
論文によると、上の研究で使っている菌は、ビフィズス菌Bifidobacterium animalis subsp. lactis LKM512で、下の研究で使っている菌は、乳酸菌Lactobacillus brevis SBC8803です。森永のサイトによると、ビフィズス菌と乳酸菌は、どちらもヨーグルトなどの原料に利用されるため、同じような菌だと思われがちですが、分類学的にはまったく異なる種類の細菌だそうです。
乳酸菌は糖を分解して乳酸を作るのに対し、ビフィズス菌は、乳酸以外にも酢酸を作ります。自然界全体でみると、乳酸菌の分布が広いのですが、ヒトの腸内ではビフィズス菌が圧倒的に優勢で、1-10兆個のビフィズス菌が住んでいるのに対して、乳酸菌はその1/10000-1/100だといわれているそうです。
ビフィズス菌にもポリリン酸はかなり多く含まれているので、上の論文の効果もポリリン酸を介しているかもしれないと思いました。そのうち「ポリリン酸1000mg配合!」とかいうサプリが出てくるかもしれませんね。
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