Reduced Lung-Cancer Mortality with Low-Dose Computed Tomographic Screening
以下は、論文要約の抜粋です。
背景:肺がんは進行が早く、細胞の種類も多様なため、検診やスクリーニングによって、肺がん死亡率を低下させことは困難だった。低線量ヘリカルCTの出現は、肺癌スクリーニングの状況を変化させ、低線量CTによって多くの早期肺がんが発見されることを示す研究がある。全国肺スクリーニング試験(NLST)は、低線量 CTによるスクリーニングが肺がん死亡率を低下するかどうかを調べるために行われた。
方法:2002年8月から2004年4月に、全米33箇所のメディカルセンターで肺がんリスクの高い53,454例を対象とした。これらを、低線量CT群(26,722)と胸部X線群(26,732)にランダムに割り付けた。スクリーニングは年1回、計3回行った。2009年12月31日までに発生した肺がんと肺がんによる死亡例のデータを集計した。
結果:スクリーニング受診率は 90%で、スクリーニング陽性の比率は、低線量CTで24.2%、胸部X線で6.9%だった。低線量CT陽性例の96.4%とX線陽性例の94.5%が偽陽性だった。肺がん発生率は、低線量CT群10万人-年あたり645例(1,060個のがん)で、X線群10万人-年あたり572例(941個のがん)だった。肺がん死亡は、低線量CT群10万人年あたり247例、X線群10万人年あたり309例で、低線量CTスクリーニングによる肺がん死亡率の低下は 20.0%だった。全死因による死亡率も低線量CT群において6.7%低下した。
結論:低線量CTを用いたスクリーニングによって肺がんによる死亡率は低下する。
検診をやって早期発見したら死亡率が下がったという上記の結論を、当然のように思われる読者が多いかもしれませんが、そうではないのです。国立がん研究センターの「科学的根拠に基づくがん検診推進のページ」に書かれている肺がんの検診ガイドラインには、以下のように書かれています。
低線量の胸部CT:推奨グレードI
低線量の胸部CTによる肺がん検診は、死亡率減少効果の有無を判断する証拠が不十分であるため、対策型検診としては勧められません。任意型検診として行う場合には、受診者に対して、効果が不明であることと、被曝や過剰診断などの不利益について適切に説明する必要があります。
ということで、上記の「肺がん検診ガイドライン」では、「低線量CT」は、死亡率減少効果の有無を判断する証拠が不十分と判定されています。
しかし、低線量CTについてのこのような状況は変わりつつあります。関連記事に書いたように、昨年の11月、低線量CT検診がヘビースモーカーについての肺がん死亡率を下げることが報告されました。さらに、本論文では、ハイリスクな人における低線量CT検診の有効性が示されたというわけです。
特筆すべきは、低線量CT検診によって、肺がん死だけではなく、すべての死因を含む死亡率が低下したことです。これは、被ばくによる発がんが最小限に抑えられたことを意味しています。今後は、低線量CTによるハイリスクな人を対象とした肺がん検診が日本でも受け入れられて行くと思われます。
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