2つの新型コロナウイルスワクチン これまでに分かっていることとまだ分かっていないこと

2つの新型コロナウイルスワクチン これまでに分かっていることとまだ分かっていないこと
以下は、記事の抜粋です。


ファイザー社/ビオンテック社(BNT162b2)とモデルナ社(mRNA-1273)による2つの新型コロナウイルスワクチンの第3相試験の結果が発表されました。いずれも「90%を超える効果」という素晴らしい結果のように思われます。この2つの新型コロナウイルスワクチンについて、私たちはどのように捉えればよいのでしょうか。

WHOによるとすでに臨床試験が行われているワクチンは48種類、前臨床試験が行われているものは164種類のものが開発されています。今回発表されたワクチンはmRNAワクチンという種類のものであり、抗原タンパク質の塩基配列を作る情報を持ったmRNAを投与し、細胞内でmRNAが抗原タンパク質に翻訳されて免疫が誘導されるというものです。

例えば、40000人の参加者のうち、20000人がワクチン接種群、20000人がワクチン非接種群に割り付けられたとして、非接種群では50人感染したのに対し、ワクチン接種群では5人しか感染しなかった、という場合に「感染していたはずの45人(90%)の感染を防いだ」という意味で90%の予防効果があった、と表現します。

例えば、最も効果が高いワクチンの一つとしては麻疹ワクチンが挙げられ、予防効果は95%と言われています。一方、インフルエンザのワクチンは、シーズンによっても異なりますが、一般的には50%程度の予防効果です。ワクチンの承認をする機関である米国食品医薬品局(FDA)は予防効果50%以上を承認の基準にしていましたが、これを大きく上回る予防効果が示されたことになります。ということで、基本的には良いニュースだと私は考えています。

ワクチンの効果には、感染を防ぐ効果とは別に「重症化を防ぐ効果」も期待されます。感染を防ぐことはできなくても、ワクチンを接種することで重症化を防げるようになれば、それだけで非常に大きな価値があります。
・ファイザー/ビオンテック:ワクチン投与群のうち8名が感染し重症1名、プラセボ群のうち162名が感染し重症9名
・モデルナ:ワクチン投与群のうち5名が感染し重症0名、プラセボ群90名が感染しうち重症11名
となっており、まだ発表されていない詳細なデータを確認する必要はありますが、重症化を防ぐ効果も期待できそうです。

新型コロナで重症化リスクが高いとされている、高齢者、基礎疾患のある人で効果があるかどうかは非常に重要なポイントですが、ファイザー/ビオンテック社のワクチンは「65歳以上のワクチン有効率94%」と発表されており、高齢者でも効果が期待できそうです。

今回の2つのワクチンについてはGrade 3(重度)の副反応として倦怠感、頭痛、局所の腫れ、筋肉痛、関節痛などが見られたとのことですが、重度のアレルギー反応や重症の発疹などを起こす可能性は高くはなさそうです。しかし、4万人のワクチン接種では分からない副作用が、今後報告される可能性はあります。

この2つの新型コロナワクチンは2回のワクチン接種が必要であり、いずれのワクチンも2回目の接種以降から現時点までの効果について検証しています。現時点では長くても3ヶ月までの効果ですので、長期的な効果についてはまだ分かっていません。

多くのワクチンの最適な保存温度は2~8℃とされていますが、今回のファイザー社/ビオンテック社のmRNAワクチンは-70℃以下という非常に低い温度を保つ必要があるとのことで、配送だけでなく、接種する医療機関での保存も問題となります。モデルナ社のワクチンは-20℃で保存し、2~8℃でも30日間保存可能とのことであり、ファイザー社/ビオンテック社のものに比べるとコールドチェーンは保ちやすいと言えます。

予想以上の予防効果が示されたことは、明るいニュースといえるでしょう。前述のようにまだ明らかになっていないことはあるものの、とても期待できるワクチンであることは間違いありません。ただし、詳細なデータはまだ未発表ですので、今後出てくるであろう詳細をじっくりと吟味しつつ、有効性と安全性が担保されたワクチンが接種できる日を待ちましょう。


インフルエンザワクチンよりも効果が期待できるのが素晴らしいと思います。心配なのは、日本が、行政的にも産業的にも極端な「ワクチン後進国」だという現実です。

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