池田信夫氏が、9月10日放送予定の「TVタックル」の「容認派vs反対派」的番組収録についてブログに書いています。以下はその抜粋です。
痛感したのは、阿川佐和子さんを含めて「福島第一原発事故は取り返しのつかない大事故で、これによってエネルギー政策は全面的な転換を迫られる」と思い込んでいる人が多いことだ。阿川さんにわかるように説明してみよう。
まず福島第一原発事故は大災害だったのかということだ。放射能の健康被害は1人も出ないということで専門家の意見は一致している。
「原発事故は国土を利用不可能にする壊滅的な災害だ」とか「核廃棄物の最終処理は不可能だ」というのも、科学的に根拠のない神話である。人々が放射能を過剰に恐れる限り帰宅も最終処理もできない。
「原発がなくても電力が足りる」とかいう話は無意味である。足りようが足りまいが、昨年と今年だけで5.4兆円の国富が流出し、電気代は2割ぐらい上がり、企業は日本から出て行く。
私が「日本で原発の新設はありえない」というと、反対派が「原発は安いといったじゃないか」と騒いだのには笑った。私は原発の燃料費(1~2円/kWh)が火力より安いといったのであって、建設費(特に安全対策費)は高い。
以上は世界の専門家と同じ意見で、ミューラーは「福島事故は予想より小さく、エネルギー政策に影響を与えない」と明言している。ヤーギンもEconomist誌も、ビジネス的には原子力に未来はないと結論しており、これは福島事故の前と変わらない。阿川さんのような普通の人が納得しないとエネルギー政策は正常化しない。
この収録には共産党の小池晃氏も出席していたようで、小池氏はTwitterで、「TVタックル収録終わり。原発問題でしたが、池田信夫氏が「放射能で死んだ人はいない」とか、「福島原発事故はマイナーな問題」などと繰り返すので、議論は度々紛糾。放送できるのか心配になるほどでした。放送は9月10日夜の予定です。」と書いています(Twitterをみる)。
小池氏自身は、池田氏の発言を引用しているだけで、その内容についてはコメントしていませんが、moto-yasu kinoshita @motokinoshita氏は小池氏に対して以下のようにTwitterしています。「放射能で死んだ人はいない、というのは、タバコを吸って(直に)死んだ人はいない、と同じ。癌になるDNAの問題。人によっては喫煙し100歳まで生きるが身近に寿命が縮んだ人は多くいる。」
小池氏自身がこのように考えているかどうかは別として、このように考えて池田氏の発言に抵抗がある人が多いのではないかと思います。これは誤解です。
実際には、被ばく線量100mSvで発がん率が0.5%高まり、それ以上の線量では発がん率が直線的に増加するというデータはありますが、100mSv以下のデータはありません。それ以下でも線量に比例して発癌率が高まるというのが「しきい値無し直線(Linear Non-Threshold、LNT)仮説」です。このLNT仮説に否定的な学者は多く、逆に微量であれば有益であるとする「ホルミシス効果」を唱える学者さえいます。
私はLNT派でもホルミシス派でもありませんが、原発事故での一般住民の被曝で問題になっているのは、100mSv以下の場合、即ち0.5%以下の発がん率の増加があるかないかの話です。一方、喫煙による発がん率の上昇はいろいろなデータがありますが、多くの場合50%以上で、原爆で2000mSvを浴びた人の確率とほぼ同じです。
これらから考えると、「放射能で死んだ人はいない、というのは、タバコを吸って(直に)死んだ人はいない、と同じ。」というのは明らかな誤解であり、池田氏の「ICRP勧告に合わせて20mSvを基準に帰宅させれば、半分以上の人は帰宅できる」という意見はリーズナブルだと思われます。
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