以下は、記事の抜粋です。
厚生労働省の薬事・食品衛生審議会薬事分科会は12月24日、アルツハイマー型認知症の治療薬として、新たに2種類の承認を決めた。
早ければ来春にも使用できる見通し。
追加されたのは、軽度~中等度の患者向けの「レミニール」(成分名ガランタミン)と、中等度以上の患者向けの「メマリー」(同メマンチン)。国内にはエーザイの「アリセプト」(同ドネペジル)しかなく、患者や医療機関から早期導入の要望が出されていた。
ガランタミンは、ヒガンバナ科の植物マツユキソウに含まれるアルカロイドの1種です。AChE阻害作用のほかに、アセチルコリンのニコチン性受容体に対するアロステリックな増強作用(APL, allosterically potentiating ligand)があります。しかし、臨床試験での効果は他のAChE阻害薬と有意な違いはないようですので、このアロステリックな増強効果の臨床的意義は不明です。副作用も吐気・嘔吐などで他のAChE阻害薬とほぼ同じです。米国FDAは2001年に承認しました。
メマンチンは、NMDA受容体に対する部分アンタゴニストで、学習と記憶に関与する神経伝達であるグルタミン酸の過剰な刺激による神経細胞障害に対して保護作用を発揮すると考えられています。メマンチンは、それ単独で、またはAChE阻害薬と併用して、中等症以上のアルツハイマー型認知症に対して有効だとされています。FDAは2003年に承認しました。
現在FDAが承認している認知症治療薬は、4つのChE阻害薬(ドネペジル、ガランタミン、リバスチグミン、タクリン)とメマンチンです。これらについて行われた59の臨床試験についての96の報告をまとめた2008年の総説では、以下のような評価がされています(総説をみる)。
1.臨床試験では主に、認知機能、全般的臨床症状、行動、QOLなどが評価された。
2.行動とQOLの評価を行っている臨床試験は少なく、結果も一貫していない。
3.大半の試験は期間が短く、認知症の開始や進行を評価するのには不十分。
4.3つの試験が複数のChE阻害薬の効果を比較したが、差は認められなかった。
5.副作用を正しく評価したものが少なく、薬物同士を比較したものも限られている。
AChE阻害薬もメマンチンも認知機能と全般的臨床症状を有意に改善したが、それらの効果は非常に小さいというのが上に紹介した総説の結論です。
また、これらはアルツハイマー型認知症についての話で、脳血管性認知症については、認知機能は少し改善するが、全般的臨床症状を改善せず、死亡率も高くなったためFDAは承認していません。
このように、ガランタミンあるいはメマンチンがドネペジルよりも優れた臨床効果があるというエビデンスはなく、ドネペジルとメマンチンを併用した方がドネペジル単独よりも優れているというエビデンスもまだありません。また、これらの新薬が脳血管性認知症に対して有効であるというエビデンスもありません。ドネペジルと同様に副作用などの情報に注意しながら慎重に使用するべきでしょう。
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