アスピリン服用は、免疫化学的便潜血検査による大腸がんスクリーニングの感度を上げる

Low-Dose Aspirin Use and Performance of Immunochemical Fecal Occult Blood Tests

以下は論文要約の抜粋です。


背景:免疫化学的便潜血検査(immunochemical fecal occult blood tests, iFOBTs)は大腸がんスクリーニングに有望な検査である。消化管出血傾向を来たし易くする低用量アスピリンは、大がんスクリーニングの対象患者で良く使用されている。

目的:低用量アスピリン服用と2種類の免疫化学的便潜血検査の成績との関連を多くの大腸がんスクリーニングの対象患者で検討する。

方法:2005-2009年に南ドイツで行われた大腸癌検診受診者1979人を対象とした。平均年齢は、 62.1、低用量アスピリン定期服用者は233例(男167、女67)、一度も服用したことがない患者は1746例(男809、女937)だった。

結果:切除不能大腸癌の検出感度は、2種類の検査とも服用群が非服用群に比べて有意に高く(70.8%対35.9%、58.3%対32.0%)、特異度はやや低かった(85.7%対89.2%、85.7%対91.1%)。


これは、先日の「アスピリンによるがん予防」と良く似ているように思えますが、がん予防とは異なるアスピリンの効果を利用しています。

がん予防の方は、アスピリンがCOX2活性を抑制して、細胞増殖作用をもつプロスタグランディンの産生を低下させるためだと思われます。一方、こちらはアスピリンがCOX1の活性を抑制して、血小板凝集を活性化するトロンボキサンA2の産生を低下させる効果を利用しています。つまり、アスピリン服用で血小板凝集を抑制して脳梗塞や心筋梗塞を予防しようとするのと同じ効果です。

おそらく、大腸がんがあっても出血しない、あるいは出血が少ないために便潜血検査では感知できないような場合があるのだと思います。一方、アスピリンを飲んでいると血小板凝集による止血が抑制されるため、がんがあれば便潜血検査のスクリーニングにひっかかるぐらいの量は出血するのでしょう。

簡単な理屈ですが、これで感度が2倍近くあがって、特異性の低下は少ないのですから素晴らしいと思います。大腸がんの発がんリスクの高い人や再発を心配する人は、アレルギーなどの問題がなければ、予防と検査感度向上の目的でアスピリンを服用するようになるかもしれません。

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