SGLT2阻害薬のフォシーガ(一般名:ダパグリフロジン)が2型糖尿病合併の有無にかかわらず、左室駆出率が低下した慢性心不全に対する適応が承認された。

SGLT2阻害薬フォシーガ、日本で慢性心不全の承認取得/AZ・小野
以下は、記事の抜粋です。


選択的SGLT2阻害薬フォシーガ(一般名:ダパグリフロジンプロピレングリコール水和物)について、標準治療を受けている慢性心不全に対する追加承認を、2020年11月27日に取得したことをアストラゼネカと小野薬品工業が発表した。慢性心不全治療薬として国内で最初に承認されたSGLT2阻害剤となる。本承認は、2型糖尿病合併の有無にかかわらず、左室駆出率が低下した慢性心不全(HFrEF)を対象とした第III相DAPA-HF試験の結果に基づく。添付文書の「効能又は効果に関連する注意」には、左室駆出率が保たれた慢性心不全(HFpEF)における本薬の有効性及び安全性は確立していないため、HFrEFに投与する旨、記載されている。

本剤は、心血管死または心不全による入院を含む心不全の悪化による複合リスクを統計学的に有意に低下させた、初めてのSGLT2阻害薬である。第III相DAPA-HF試験において、標準治療との併用で主要複合評価項目をプラセボと比べて26%低下させた。また、主要複合評価項目の構成項目である心血管死および心不全の悪化の両方において、全体的にリスクを低下させた。試験期間中、本剤投与群では患者21例ごとに1件の心血管死、心不全による入院、または静脈注射による心不全治療につながる緊急受診を回避した。

添付文書に追加記載された内容
■効能又は効果
慢性心不全:ただし、慢性心不全の標準的な治療を受けている患者に限る。
■効能又は効果に関連する注意
左室駆出率が保たれた慢性心不全における本薬の有効性及び安全性は確立していないため、左室駆出率の低下した慢性心不全患者に投与すること。「臨床成績」の項の内容を熟知し、臨床試験に組み入れられた患者の背景(前治療、左室駆出率等)を十分に理解した上で、適応患者を選択すること。


SGLTとは、sodium glucose cotransporter(sodium glucose transporter)の略で、「ナトリウム・グルコース共役輸送体」と呼ばれるタンパク質の一種のことです。SGLTは、体内でグルコース(ブドウ糖)やナトリウムといった栄養分を細胞内に取り込む役割を担っています。

SGLTには複数の種類がありますが、SGLT2は、腎臓の近位尿細管に存在しています。近位尿細管は、血液中から取り出して必要なものを体内に取り込み、不要なものを尿として排泄する働きをします。この過程において、SGLT2は、グルコースを栄養分として細胞内に取り込む役割を担っています。近位尿細管で再吸収されるグルコースのうち、90%はSGLT2の働きによるものです。

SGLT2阻害薬はSGLT2の働きを阻害するので、近位尿細管でのグルコース再吸収が減り、その分だけ尿糖の排泄が増えます。その結果、高血糖が改善されるので糖尿病の治療に用いられています。特徴としては、低血糖リスクが低い、体重減少効果、血圧低下、脂質改善(LDLコレステロール、HDLコレステロール、トリグリセリド)などがメリットとされています。

SGLT2阻害薬のフォシーガ(一般名:ダパグリフロジン)が2型糖尿病合併の有無にかかわらず、左室駆出率が低下した慢性心不全に適応が承認されたことは、心不全治療にとってもSGLT2阻害薬にとっても大きなニュースです。以下の表のように、他のSGLT2阻害薬も後を追っています。

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