以下は、記事の抜粋です。
毎日多量のビタミンBを摂取することで、アルツハイマー病の兆候の1つである脳の萎縮の速度を抑え、発病を遅らせたり予防したりできる可能性があるとの研究結果が9月9日、米科学誌PLoS ONEに掲載された。
脳の萎縮は老化とともに自然に発生するが、アルツハイマーや認知症の前兆とされる軽度認知障害(MCI)患者では通常より速く進行する。調査は2年間にわたって、MCIと診断された70歳以上のボランティア168人を対象に実施された。
被験者の半分には高濃度のビタミンB(葉酸、B6、B12)の錠剤を投与し、脳萎縮を調べた。残りの被験者にはプラシーボが使用された。ビタミンを摂取した被験者の脳萎縮の進行は、平均で30%、最大で53%遅くなったことが確認されたという。
この論文を発表した研究チームは、ビタミンを使った治療が病気の進行を遅らせ、さらには予防も可能になることを期待しているが、それにはさらなる研究が必要であると強調している。そして、研究で使ったビタミンBは通常の食事やサプリメントに含まれるより大幅に高濃度だったことを指摘し、この研究をうのみにして大量のビタミンBを摂取しないよう呼びかけている。
元論文のタイトルは”Homocysteine-Lowering by B Vitamins Slows the Rate of Accelerated Brain Atrophy in Mild Cognitive Impairment: A Randomized Controlled Trial”です(論文をみる)。
この論文は、アルツハイマー病の兆候の中で、「脳の萎縮」に注目しています。認知については後の論文で報告するとして、解析していません。血中ホモシステインレベルの低下をおこすビタミンB群投与によって、MCI(mild cognitive impairment)患者脳の萎縮を遅延できるかどうかを調べた、ニ重盲検ランダム化臨床試験です。
脳萎縮という客観的な指標を用いることで、少ない症例でも短期間で答えが出るように、賢くデザインされた臨床研究だと思います。
投与されたビタミンBは、葉酸(0.8 mg/d)、ビタミンB12 (0.5 mg/d)、ビタミンB6 (20 mg/d)で、通常のサプリよりもかなり大量です。2年間投与した後、MRIで脳体積を調べました。
ビタミン投与群での脳萎縮は1年間に0.76%だったのに対し、プラセボ群では1.08%で、治療に対する反応性は血中ホモシステイン量と負に相関していました。特に重大な副作用は認められませんでした。
また、脳萎縮の抑制は血中ビタミンB12と葉酸の量に相関していましたが、B6の量とは相関していませんでした。本論文では、ビタミンB12と葉酸のどちらが萎縮と関連しているかはわかりませんが、以前の研究で、葉酸ではなくB12の低下が脳萎縮と相関するという報告があるそうです。総合するとB12が重要そうです。
70歳以上のヒトの16%がMCIで、この中の半数がアルツハイマー病になります。また、アルツハイマー病になるMCIの特徴は、進行性の脳萎縮です。本研究は、ビタミンBが直接アルツハイマー病の発症を抑制するかどいうかを調べたものではありませんが、そのような仮説を検証する研究の必要性を強く示唆するものだと思います。
下図のように、ホモシステインはタンパク質に含まれるメチオニンから作られます。ホモシステインは自己酸化を起こします。酸化過程において生じた過酸化水素やスーパーオキシドラジカルなどの酸化ストレスが細胞障害を起こし、動脈硬化や脳萎縮をおこすとされています。
ビタミンB群は、動物の肝臓などに多く含まれていますが、植物にはほとんど含まれていません。魚も食べないベジタリアンの人は気を付けた方が良いかもしれません。
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