以下は、記事の抜粋です。
神戸市立王子動物園は9月9日、中国から借り受けているジャイアントパンダの雄「興興(コウコウ)」が死んだと発表した。動物園では人工授精を試みており、精子を採取するため麻酔をかけたところ、数時間後に心肺停止状態となったという。死因は不明。14歳だった。 同動物園は7月、飼育繁殖に関する日中共同研究のため、2000年から結んでいるレンタル契約を15年まで5年間延長したばかりだった。
「死因は不明」とありますが、明らかに麻酔死です。どのような麻酔が行われたのか考えてみました(あくまで想像です)。
動物の場合、意識があると暴れるため、局所麻酔は難しいので全身麻酔を選択することになると思います。全身麻酔には吸入麻酔と注射麻酔があります。吸入麻酔は注射麻酔に比べ、時間の長短にかかわらず麻酔深度についての調節が容易で、短時間で覚醒する安全な全身麻酔です。
しかし、大型の動物の場合は、マウスやラットのように麻酔チャンバー等が使えないので、専用の吸入麻酔器が必要になります。おそらくジャイアントパンダ用の吸入麻酔器はないと思います。このような理由で、パンダには注射麻酔が行われたと想像します。
注射麻酔に使われる薬物としては、ペントバルビタール、ケタミンなどがあります。ペントバルビタールには強い呼吸抑制作用と循環抑制作用があり、少しでも過量になると麻酔死がおきやすく、使うのが非常に難しい薬物です。
一方、ケタミンにはこのような抑制作用はなく、獣医さんに重宝されていたのですが、平成19年からケタミン含有麻酔薬は、「麻薬及び向精神薬取締法」の対象薬となり、使用する場合は、研究者個人が麻薬研究者の免許を取得し、厳密に管理することになりました。
大型動物の全身麻酔が非常に難しい現在の状況がパンダの麻酔死につながったのではないかと推測しています。
興興(コウコウ)(中国名は龍龍(ロンロン)、王子動物園のサイトより)
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